巻ノ九十七 金の極意その五
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「動くか」
「そうします、そして」
「生きるな」
「そうします、死ぬことはしませぬ」
「そのことだけは守って欲しい」
雑賀としてはというのだ。
「是非な」
「はい、そのお言葉肝に銘じておきます」
「ではな、貴殿等のことはこの熊野で聞いておるぞ」
「さすれば」
幸村は穴山と共にだ、雑賀に深々と頭を下げてだった。そうして。
姿を消した、そしてだった。
すぐに九度山まで戻った、そのうえで九度山で大助を見て笑みを浮かべて言った。
「健やかに育っていっておるな」
「ですな、実に」
穴山も主の子の様子を見て笑みを浮かべて応えた。
「日に日に」
「そうじゃな」
「大助様もよき武士になられるでしょうか」
「そうしたいな」
「では殿と我等で色々と」
「教えていこう、そして父上もそうして下さるという」
昌幸もというのだ。
「我等と共にな」
「大殿もですか」
「我等は戦の時以外は人に厳しく出来ぬな」
「戦の時も無闇な殺生はしませぬし」
十一人共それは一切ない、戦だから人を倒すがそれでも無駄に人を殺すことはない。捕らえた者も民達も手にかけることは一切しないしこれまでもなかった。
「どうもです」
「父上も無闇な殺生はされぬが」
「しかしですな」
「厳しく出来る」
他の者に対してというのだ。
「だからな」
「厳しいことはですか」
「父上が言われるという」
「そうですか」
「だから大助は厳しいことも知り」
「我等から他のこともですか」
「知ることになる」
そうなるというのだ。
「大きくなればな」
「そうですか、ではまずは健やかに」
「育って欲しいな」
「ですな、して殿は九度山に入られてから」
「随分とな」
まさにとだ、幸村も応えた。
「子宝に恵まれる様になった」
「左様ですな」
「よいことじゃ」
「ははは、子はかすがいですな」
「全くじゃな」
「ではお子の方々を」
「これから育てていこう」
幸村は父親の顔も見せていた、それは慈愛に満ちたものだった。しかしそうした顔ばかりではなくだ。
九度山では学問に励んでいた、修行の後で書を読むのが日課になっているのは元服前から変わらないが。
史記を読んでからだ、十勇士達にこうしたことを言った。
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