巻ノ九十七 金の極意その四
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「実にじゃ」
「よいと言われますか」
「一本じゃ」
幸村にはこう言った。
「その気質はな」
「これでも策を使いますが」
「それでもじゃ」
その策を使おうともというのだ。
「貴殿の心はじゃ」
「一本ですか」
「奇麗なな」
「だからですか」
「その主君だからじゃ」
「家臣達もですか」
「心がよい、曲がった主君には曲がった家臣が来る」
そうなるというのだ。
「自然にな」
「士は士を知る」
幸村の今の言葉はしみじみとしていた。
「左様ですな」
「その通りじゃ」
「だからですな」
「真田殿がそうした方だからな」
「小助達もですか」
「心がまっすぐじゃ」
つまり素直だというのだ。
「実にな」
「それでは」
「うむ、ではな」
「これからも」
「貴殿も穴山殿達もな」
「このままの心根で」
「進まれよ、それではわしはな」
雑賀は自身のことも話した。
「これまで通りじゃ」
「ここで、ですか」
「過ごす」
この熊野の山奥でというのだ。
「そうする」
「そしてご一生も」
「そうじゃ、もう何も思うことはない」
この世に対してというのだ。
「だからな」
「熊野から出られませぬか」
「一切な」
「わかりました」
「何も言わぬか」
「雑賀殿がそうお考えなら」
それならばとだ、幸村は雑賀に言葉を返した。
「それがしは何も言いませぬ」
「わしの考えを汲み取ってくれてか」
「いえ、雑賀殿は雑賀殿ですから」
「だからか」
「はい、雑賀殿がされたい様に」
そうすればというのだ。
「されて下さい」
「わかった、ではな」
「その様に」
「そして真田殿達もか」
「時に備えて修行を続けて参ります」
「その時が来ればな」
雑賀もわかっていた、それからのことは。
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