巻ノ九十七 金の極意その三
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「実にな」
「そうなのですか」
「御主の心が出ておるな」
穴山のそれがというのだ。
「確か真田殿とお会いして二十年程じゃな」
「はい、共におります」
「それまでは流れ者の忍であったな」
「鉄砲を使ってあちこちを巡ったりして」
「そうであったな」
「はい、ですが殿が旅に出られた時にです」
「お会いしてじゃな」
「それからずっと共におります」
こう雑賀に答えた。
「今もですが」
「それまでもそこまで荒んだものは見てもこなかったか」
「見てきましたが」
「しかしじゃな」
「それより遥かにです」
荒んだもの以上にというのだ。
「素晴らしき、美しきものを見てきました」
「真田殿と共にいてか」
「そうです、殿程見事な心根の方はおられませぬ」
今現在も共にいる幸村を見てだ、穴山は答えた。
「その殿を見て殿と共に多くのものを見て」
「そしてか」
「はい、そのせいでしょうか」
「素直なのじゃな」
「そう思いまする」
「おそらくそれは御主だけではあるまい」
こうもだ、雑賀は言った。
「やはり」
「そう言われますか」
「うむ、十人共じゃな」
十勇士全員がというのだ。
「同じ主に仕え同じものを見てきたからな」
「だからですか」
「やはり十人共じゃ」
「素直だとですか」
「そう思う」
「はい、どの者もです」
その幸村も言ってきた、彼等の主である。
「実にです」
「心根がじゃな」
「よいです」
「やはりそうか」
「素直な者達です」
「戦国の世であったが」
「それでもです、最初からです」
つまり出会った時からというのだ、彼等がそれぞれ。
「どの者も非常によき者達でした」
「そしてそのままじゃな」
「今もです」
「そうであろう、よくわかったわ」
「小助の術を見て」
「それがな」
「術は人も表す、ですな」
幸村は雑賀に自ら言った。
「左様ですな」
「そうじゃ、鏡じゃ」
「術は」
「だからわかる」
こう幸村に言った。
「わしもな」
「左様ですな」
「そして貴殿もな」
幸村もというのだ。
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