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歌集「春雪花」
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 宵闇に

  風も絶へ絶へ

   蝉の声

 響くは侘し

    文もなく

 流るる時節

    眺むれど

 独り淋しき

   月籠もり

 いつかは去りて

     懐かしむ

 こともありきと

  思えども

 君そなかりき

    この宵に

 心和らぐ

  こともなく

 この世のほかに

   玉の緒を

 託して風を

     追う如く

 生きゆくことの

  虚しさを

 慰むるものの

    なかりせば

 いつぞ死なんと

  思ふらむ

 あしたに夕に

    想いせば

 千々にも乱る

     心ゆえに

 もはやなかりき

     伝わるる

 思いそ尽きね

   名を呼べば

 溜め息ぞつく

     夜の闇に

 現にありて

   如何にせんと

 問ふも答えの

     なかりせば

 わが身そ朽ちね

    文月に

 星の語ろう

   空はいづこぞ



 蒸し暑き宵の闇…風さえ吹かず、蝉の鳴き声だけがこだまする…。

 なんと侘しいことだろう…彼からの便りも絶え…ただ過ぎ去るだけの時を眺めているだけ…。

 独り佇み見上げた空は…雲に覆われた月のない闇…。

 現実の荒波…弱気な心…疲れはてた躰…全て過ぎ去った後、いつかは懐かしむ時が来るのだろうか?

 もしそうだとしても…今ここに彼はいない…。

 彼の影もない上に…儘ならない日々の荒波に、私の心は疲弊し…和らぐこともない…。

 あの世に魂を預け…ひたすら風を追うように生きたとして…ただただ虚しい限りだ…。

 心を慰めるものもなく…あぁ、私はいつ死ぬのかと…そう思わずにはいられない…。

 朝も夕方も関係無く…彼を想っては乱れる心…。

 彼からメールがくることはもうないのだろう…この想いを伝えることさえ、もうないのだと割り切らねばならないのに…様々な思いが次から次に湧き出し、痛みに耐えかねて彼の名を口にした…。

 だが…返るはずもなく…溜め息を一つ…。

 生きることさえ辛い夜の闇…そんな現実に、私はどうしたら良いのだろうか…。

 それを問い掛けたとして、答えなどありはすまい…。

 この弱すぎる私の身など、七月の夜闇の中…早く朽ち果ててしまえば良いのに…。

 苦しさは堪え難く…涙して空を見上げる…。

 あぁ…星々の瞬く空は…どこにあるのだろうか…?


 自分の弱さを嘆く私に…光を見せておくれ…。




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