秋ナスがダメなら夏にナスを食べるのです!・その2
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尚且つ、敵の戦意と戦闘力を奪うには均衡した強さではダメだ。相手を圧倒しつつ殺さずに無力化出来る……それだけの力を持つ者が生かすも殺すも権利を持つ事が許される。ならば答えは至極シンプルな物だ。だから俺は泣きじゃくる電に言ってやった。
「自分が弱いと嘆く暇があるなら強くなれ、電。自分も仲間も敵も、全ての命を背負い込めるだけの力を持て。お前が語ってる理想ってのは、そういう修羅の道だ」
端から見れば薄情にすら見えるかも知れない。だが、その日から電は確実に変わった。砲撃や雷撃よりも格闘戦を重視した立ち回りになり、俺も何度も格闘技の指南をした。これは電なりに考え抜いた結果であり、砲撃や雷撃ならば殺してしまいそうな相手でも、徒手格闘や武器術ならば自分の匙加減で殺さずに峰打ちで仕留める事も可能だ。小柄で小回りの利く体躯だった事もあり、メキメキとその実力を伸ばしていった電は、今では新人研修の格闘技専任教官を任せられるまでになった。笑顔でハードメニューをごり押ししてくる姿は、俺とは違う意味でドSだと恐れられている。
そして戦闘に於いても意識改革があったらしい。以前の電ならば敵対した敵の全てに攻撃するのを躊躇うような仕草があったらしいが、今では相手を見極めて砲雷撃でトドメを刺す者と格闘戦で殺さずに無力化する者を取捨選択するようになった、との報告を受けている。自分の実力を弁えて助けられる者と相容れない者とで分けるようになったらしい。実際、電に沈められずに救われた深海棲艦は戦闘中から嫌々戦っているようなそぶりを見せていた者が大半らしく、戦闘終了後は何処へなりと逃げていくそうだ。
そして何より、電の姉達が驚いていたのだ。『電が泣かなくなった』と。着任当初は毎晩隠れて涙を溢していたらしいが、人前でなくても泣かなくなったと暁達が驚いて俺に相談しに来たのをよく覚えている。俺も何となく事情は察していたので、精神的に成長したんだろうから、その成長を姉として喜んでやれと言っておいたのだが……どうやら、その発散方法が解らずに溜め込んでいたせいで今回のような事になってしまったらしい。
「……なぁ提督、ウチは強くなれたんやろか?」
俺に縋るような視線を送ってくる電。しかしその答えは俺も持ち合わせてはいない。
「さてな。強さの定義は人それぞれだからな、電の求める強さは俺には解らんよ」
俺の求める強さは、家族を護る事が出来る『力』だ。それは単純な武力であり、策謀を巡らせる政治力であり、それを貫徹する精神力であると俺は考えている。どう考えても電の理想とする強さとはかけ離れており、俺がそれを電に押し付けるのは得策ではない。
「せやろな、ウチと提督じゃ立場から何から違うもんな。……変な質問してすまんな」
「いいさ、これでも食って気分
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