第一幕:ふたつの虹に魅せられて
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分丁寧な言い方といい、少し不思議な印象を受けたが、自己紹介なので、改まった言い方になったのかなと、俺は思った。
時崎「水風さん・・・で、いいのかな。ありがとう」
水風「はい。よろしく・・・です」
水風さんは、初対面の人に対して冷たい感じはしない。しかし、なんとなく、ぎこちない感がする。初対面なのだから距離をとっているのは当然なのだが、それが少し切ない。
時崎「この街には、しばらくいるつもりなので、また会えたらよろしく」
水風「はい」
水風さんは「はい」と言ってはくれたが、これは、所謂社交辞令だろう。ここで別れると、次に会えるかどうかは分からない・・・むしろ、会えない確率の方が遥かに高いだろう。そう思うと、ここで写真撮影のお願いをしなければ、後で激しく後悔するという未来が待っている。「勇気は一瞬、後悔は一生」という言葉がある。元々、人物の撮影は色々あって避けていたけど、今回だけは・・・今回だけはっ!!
時崎「み、水風さんっ!!」
水風「は、はい!?」
時崎「写真・・・お願いしてもいいかな!?」
回りくどい言い方は、逆効果だと思ったので、頭を下げてストレートにお願いする・・・断られたら、潔く諦める覚悟でいた。何だろこれ、まるで告白でもしたかのように、心拍数が上がっている。そして、返事を待つこの間、早まる鼓動とは反比例のごとく、時間経過は遅くなっている感覚だ。
水風「えっと、写真・・・いいですよ」
なんと、許可が貰えた。写真撮影のお願いで、こんなにドキドキするなんて・・・「写真撮影は命がけだっ!」なんて聞いて、大袈裟だなと思った事があるが、今回は、その言葉が骨身にしみるようだ。
時崎「ありがとう。水風さん!!」
水風七夏さん・・・思いがけず出逢えた「不思議なふたつの虹」をファインダーが優しく包み込む。バス停の前で佇むような水風七夏さんが印象的で、のどかな(静かな)風景の中、聞き慣れたはずの機械的なシャッター音が、不思議な音色であるかのように、耳へ届いてきた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
宿にて、今日撮影した写真を確認する。水風七夏さんの写真だ。しかし、撮影した写真に、虹は存在しなかった。水風さんの瞳は、見る角度によって色が変化していたのに、撮影した写真5枚とも翠碧色(緑青色)の瞳である(正確には7枚撮影しているが、2枚は目を閉じた表情なので、虹は彼女の中に隠れている)。撮影した時、偶然翠碧色だったのか・・・。撮影した直後に、確認すれば良かったのかも知れないが、本人を目の前にして小さな液晶画面の中の水風さんを、まじまじと拡大して確認なんて、できなかった。やはり、虹はそう簡単に撮影できないようで、その事が水風さんの虹への魅力と関心をより強くしてくれた。あと、撮影した写真の表情が、少し硬い
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