第一幕:ふたつの虹に魅せられて
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だから・・・」
少女は、バス停の時刻表を見つめている為、後姿でその表情は分からない。言葉を詰まらせている様子から、申し訳ないと思う気持ちだけは伝わってくる。どうやら、バスが来たのに、眠っていた俺を、起こせなかった事を、気にしているらしい。
主 「なるほど、ありがとう。気にしなくていいよ」
少女「・・・・・」
主 「ここで、少し休んでいただけだから」
少女「え!? 休んでいた・・・」
主 「少し椅子を借りただけで・・・」
少女「椅子を・・・私と同じ・・・」
少女は、俺の言葉にホッとしたのか、少し言葉が柔らかくなる。そして、少女が此方に振り返った時−−−−−
主 「虹!?」
見間違いか、まだ寝ぼけているのかとも思ったが、その少女の瞳は、虹のように七色に変化した。瞳の事を「虹彩」と言うが、彼女こそ、本当の意味での虹彩の持ち主かも知れない。七色に変化するその瞳に我を忘れかけた時、
少女「えっと・・・ご旅行・・・ですか!?」
少女の問いかけに、我を取り戻す。
主 「あ、ごめん。旅行・・・というよりも、写真撮影・・・かな」
少女「写真・・・」
主 「そう! 虹の写真を撮影できればと思ってね」
少女「・・・いい写真、撮れました?」
主 「まあ、虹は撮れなかったけど・・・」
ここで、思い出す。そうだ!! 虹!!! 今までに出逢った事のない不思議な虹が、ここにあるではないか! しかし、その虹は初対面の少女である。いきなり写真撮影をお願いするのは、あまりにも勇気が必要だ。どうする? どうするっ!? そんな葛藤の中、
少女「虹・・・」
少女が呟く。
慌てて、少女の呟きに歯車を合わせる。
主 「そ、そう、虹! この街は、ブロッケンの虹がよく現れると聞いてね」
少女「ぶろっけん?」
少女は、ブロッケンの虹の事を知らないようである。確かに、一般的な虹ほど有名とは言えない。
そこで、携帯端末(MyPad)を取り出し、ブロッケンの虹が、どのような虹なのかを、少女に見せてみる。少女は少し近付き、携帯端末に視線を送る。
少女「・・・・・綺麗な景色です」
写真を見て綺麗とは言ってくれたが、肝心の虹に関しては、いまいちな反応である。まあ、興味の対象は、人それぞれなので、ここで虹の事を押し付けるべきではないだろう。初対面の相手に対しては、反応があった内容に話を合わせる方が無難だと思う。それよりも、大切な事を忘れていた・・・まだ自己紹介をしていない。
主 「そう言えば、自己紹介がまだだった。俺は、時崎柚樹。よろしく」
少女「えっと、私は、七夏。あ、水風七夏と申します」
最初に「ななつ」と苗字ではなく名前を答えたこと。「申します」と随
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