頼る事
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
刀を振るうが、斧で受け止める。
その一撃がとても重く、さっきからで受けた一撃とは全く違った。
受けて気がついた。
この男は手加減していたのだと。
「何で一人で背負いこむんだよ!
誰かに頼ればよかったじゃないか!!」
「村の者にこれ以上迷惑をかけられない!
何より、儂の我が儘で村の者が命を落せばどうする!」
「なら、俺に助けを求めればいい!
村の人が死ぬのが恐いなら、俺を頼ればいい!」
「なっ・・・・」
丁奉は言葉を失った。
敵として向かい合ったのに、敵である自分を頼れと言い出したのだ。
「あんたの娘はたった一人の家族だろ!!」
刀を捨て拳を握る。
氣で強化した拳で丁奉の顔を思い切り殴りつけた。
二メートル三十センチの巨体が吹き飛ぶ。
「ちょっとは目が覚めたか?」
地面に倒れている丁奉に縁は捨てた刀を拾いながら言う。
対する丁奉は大の字に倒れて空を見上げていた。
「たった一人の家族なんだ。
何が何でも救わないと駄目だろ。」
縁は目の前で両親を失った。
不幸にもそれを自覚するだけの意識があったから、尚の事罪悪感に蝕まれた。
丁奉は娘を犠牲にすれば必ず自分を責める。
目の前で家族を失うあの気持ちを誰にも感じて欲しくなかった。
「儂の負けだな。」
そう呟く丁奉だがその表情はどこか清々しい顔をしていた。
これらを見ていた賊達は狼狽えはじめる。
あの丁奉が負けたのだ。
しかも、あの男と手を組むような流れになっている。
どうすればいい、と思った時だった。
「そんなんじゃあ駄目だな、丁奉。」
声は狼狽えている賊達の後ろから聞こえた。
丁奉はゆっくりと立ち上がってその声のする方に視線を向ける。
縁も賊達もその方に視線を向けた。
一見、賊と何も変わらないのだが賊のすぐ傍には一人の少女が居た。
縁はあれが丁奉の娘なのだと推測する。
集まった賊達は統領と呼んだ所を考えるに、賊達のボスなのだと縁は判断する。
「お父さん!」
「美奈!!」
「あれがあんたの。」
統領は手に持っている剣を美奈の首に当てながら、こちらにやってくる。
集まっている賊達は左右に分かれ道を開ける。
縁との距離はおよそ二十メートルといったところだろう。
幾ら氣で強化した足で接近しても、統領の剣が美奈の首を刎ねる方が早い。
「あんたの娘が死んでもいいって言うなら、勝手にすればいい。」
「くっ・・・」
殺気の籠った視線を送る。
統領は一瞬脅えたが、人質が傍にいるので余裕の態度を崩さない。
「お前も動くなよ。
動けばこいつの命はないぜ。」
他の賊達もこの人質が居れば問題ない、と安心したのか余裕の表情を浮かべる。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ