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我が剣は愛する者の為に
頼る事
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刀を振るうが、斧で受け止める。
その一撃がとても重く、さっきからで受けた一撃とは全く違った。
受けて気がついた。
この男は手加減していたのだと。

「何で一人で背負いこむんだよ!
 誰かに頼ればよかったじゃないか!!」

「村の者にこれ以上迷惑をかけられない!
 何より、儂の我が儘で村の者が命を落せばどうする!」

「なら、俺に助けを求めればいい!
 村の人が死ぬのが恐いなら、俺を頼ればいい!」

「なっ・・・・」

丁奉は言葉を失った。
敵として向かい合ったのに、敵である自分を頼れと言い出したのだ。

「あんたの娘はたった一人の家族だろ!!」

刀を捨て拳を握る。
氣で強化した拳で丁奉の顔を思い切り殴りつけた。
二メートル三十センチの巨体が吹き飛ぶ。

「ちょっとは目が覚めたか?」

地面に倒れている丁奉に縁は捨てた刀を拾いながら言う。
対する丁奉は大の字に倒れて空を見上げていた。

「たった一人の家族なんだ。
 何が何でも救わないと駄目だろ。」

縁は目の前で両親を失った。
不幸にもそれを自覚するだけの意識があったから、尚の事罪悪感に蝕まれた。
丁奉は娘を犠牲にすれば必ず自分を責める。
目の前で家族を失うあの気持ちを誰にも感じて欲しくなかった。

「儂の負けだな。」

そう呟く丁奉だがその表情はどこか清々しい顔をしていた。
これらを見ていた賊達は狼狽えはじめる。
あの丁奉が負けたのだ。
しかも、あの男と手を組むような流れになっている。
どうすればいい、と思った時だった。

「そんなんじゃあ駄目だな、丁奉。」

声は狼狽えている賊達の後ろから聞こえた。
丁奉はゆっくりと立ち上がってその声のする方に視線を向ける。
縁も賊達もその方に視線を向けた。
一見、賊と何も変わらないのだが賊のすぐ傍には一人の少女が居た。
縁はあれが丁奉の娘なのだと推測する。
集まった賊達は統領と呼んだ所を考えるに、賊達のボスなのだと縁は判断する。

「お父さん!」

「美奈!!」

「あれがあんたの。」

統領は手に持っている剣を美奈の首に当てながら、こちらにやってくる。
集まっている賊達は左右に分かれ道を開ける。
縁との距離はおよそ二十メートルといったところだろう。
幾ら氣で強化した足で接近しても、統領の剣が美奈の首を刎ねる方が早い。

「あんたの娘が死んでもいいって言うなら、勝手にすればいい。」

「くっ・・・」

殺気の籠った視線を送る。
統領は一瞬脅えたが、人質が傍にいるので余裕の態度を崩さない。

「お前も動くなよ。
 動けばこいつの命はないぜ。」

他の賊達もこの人質が居れば問題ない、と安心したのか余裕の表情を浮かべる。

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