ターン76 鉄砲水と紅蓮の黒竜
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よ?鮎川先生が明日香に伝えちゃったなら、それを前提に動かないと。花瓶の水替えでも見舞いの品の用意でもなんでもいいけど、次に明日香があの部屋を出るときがチャンスだからね。最悪窓から入ることになったって吹雪さんには起きてもらうさ」
「……いや、それには及ばないよ」
一体どうやって、あの部屋を出たというのか。ひどく苦しそうに息をつき壁にもたれかかりながらも、吹雪さんがそこにいた。腕には起動済みのデュエルディスクを付け、その手には1枚のカード……ここから見てもわかるほどに闇の力が感じられる、前にも見た覚えのあるカードが握られていた。通常のカードとは違い名前も効果もなく、ただ鎖に縛られた漆黒のマスクが1つ浮かんでいるだけのイラストのカード。
「ダークネス……」
「ああ、明日香には本当に申し訳ないと思うけど、この力で少しの間眠ってもらったよ。それより2人とも、僕を、もう1度あの場所に……」
そう言いながらも、今にもその場に倒れこみそうな吹雪さん。慌てて駆け寄って肩を貸し、十代を先頭に歩き出した。いくら本人たっての願いとはいえ、本当にこんなボロボロの人を連れ出していいんだろうか。そう思いはしたが、それを口にはできなかった。僕も真実を知りたい、という好奇心も否定できないが、それだけではない。肩を貸した時に見えた、吹雪さんの目。なによりも大事にしている妹のことまでこの人らしからぬ力技で振り切って、それでも自分のすべきことを成そうとしている目。あんな目をした人を前に、体に無理が来てるんだから今は休みましょう、なんて言えるわけがない。
結局、最後の方は肩を貸すというよりなかば背負うようになりながらも、いつもの廃寮にたどり着いてしまう。元ここの生徒だけあって迷うことなく奥に入っていくのを支える途中で、物陰から半身だけ出してこっそりこちらを窺う廃寮の幽霊、稲石さんの姿も目に入った。僕と目が合ったことに気づくとすぐに人差し指を唇にあてて黙っていて、とジェスチャーし、幽霊らしく足元からすうっと消えていった。そういえばあの人、一体誰なんだろう。この廃寮は行方不明こそ出しているものの、死人が出たという話はない。ここがお化け屋敷扱いだった頃は特に疑問にも思わなかったけど、こうして廃寮そのものの秘密が少しずつ明らかになってくると、その中心でいまだ謎に包まれたままのあの人の正体が今更になって気になってきた。一体どこから来て、なぜ死んで、なぜここにいるのか。それに関しても、今度問い詰めに来た方がよさそうだ。
そう心に決めたところで、吹雪さんの足が止まった。そこはちょうど広間のようになっている部屋で、今では見る影もないものの当時は豪勢な場所だったのだろう。当時を懐かしむように目を細めて見回してから、ダークネスの仮面が封印されたカードを取りだす。
「ここまで来れば
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