ターン76 鉄砲水と紅蓮の黒竜
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ターンではまたどんな化け物が生み出されるかわかったものじゃない。
ここで決める。なんとしても。僕の思いを載せた一刀はダークネスメタルの火球を潜り抜け、悪魔竜の獄炎を切り払い、黒炎弾を纏う妖星の一撃をも真っ向から叩き伏せ、たった一つ残された僕に向いた勝利の可能性、真紅眼の幼竜を深々と切り裂いた。
霧の王 攻2500→真紅眼の幼竜 攻1200(破壊)
吹雪 LP1300→0
「ぐおおおおおっ!」
吹き飛んだ衝撃で、吹雪さんの場に置かれていた最後の伏せカードが表になる。トラップカード、バーストブレス……ドラゴン族モンスター1体をリリースすることで、その攻撃力以下の守備力を持つモンスター全てを破壊するカード。フリーチェーンで打てるあのカードなら、もしアリゲーターとインパクトのコンボを狙っていたら通常召喚の時点で場が壊滅させられていた。カイザー・シースネークの特殊召喚に対して使わなかったのは、僕が召喚権を使うのを待っていたから。しかし吹雪さんの想定に反して僕が召喚した霧の王はその特殊能力として、場に出た瞬間から互いのプレイヤーによるあらゆるリリースを禁止する。もし最後に強欲なウツボを使ってこの3枚を引き当てていなければ、このターンでは決着はつかなかっただろう。となると、吹雪さんとダークネスの力はまた……いや、もうよそう。ダークネスはまた封印できた、それで良しとしよう。
何かの拍子にそのダークネスの仮面がひび割れて吹雪さんの顔から外れ、床に落ちて無機質な音を立てる。もう今度こそ、この世の表舞台に出てくるんじゃないよ。
「吹雪さ……」
「兄さん!」
床に倒れこんだまま起き上がろうとしない吹雪さんの元に駆け寄ろうとした時、後ろから鋭い声が聞こえた。振り返らなくても誰がどんな顔をしているか想像はついたが、無視するわけにもいかないのでゆっくりと顔を声のした方向に向ける。そこには、予想より十倍は険しい顔と冷たい目をした明日香が走ってきて、吹雪さんの半身を起こして背中を支えてやりながら僕のことを視線だけで殺さんとばかりに睨みつけていた。
そりゃあ、明日香からしたらそうだろう。彼女にしてみれば僕らは、絶対安静の自分の兄と一緒に医務室を抜け出したあげく体に負担のかかる無茶な闇のデュエルをさせ、あげくの果てにぶっ飛ばした張本人なのだから。しかし、誰にも言わずに来たはずなのにどうしてここがわかったんだろう。その疑問に答えるように、広間の入り口から声がする。
「今日は随分不用心でしたね、先輩。歩いた後に沿って小枝が折れてたり、石を蹴り飛ばした跡があったり、きちんと見れば綺麗に通った後の道ができていましたよ。しかもこの廃寮、正門が開けっ放しになっていましたし」
「葵ちゃん……」
なるほど、彼女も追ってきてたの
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