ターン76 鉄砲水と紅蓮の黒竜
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その日の夜、医務室。どうやら十代、僕らには一切内緒でオブライエンと連絡を取り合い、藤原優介という男について僕らが出会う前から調査していたらしい。下手に隠したりして、もし僕らが何か嗅ぎ付けたらそのまま首を突っ込むことぐらいわかんなかったのかねこの男は……なんて、今日の昼まで夢想にミスターTの存在を隠そうとしていた僕に言えたことではないけれど。
だから僕に、十代を責める資格はない。その気持ちは、痛いほどよくわかるからだ。でもだからといって、このわだかまりがすんなり溶けるわけではない。なんとなく目を合わすのも気まずいような空気の中でオブライエンが廃寮から連れ帰ってきて、現在気を失っている吹雪さんの看病をしながら、なぜこんなことになったのかを思い返していた。元々はこのアカデミアで見つかったのと同じ、デュエルディスクに反応しない妙なカードの謎を追っていたらしいオブライエンがその途中で名前を見つけ出し、調査したという藤原についての内容……それをまとめると、だいたいこんな風になる。
一、藤原優介は実在する人間。
二、ただし彼は、もう何年も行方不明のはず。
三、彼が行方不明になったのは、例の特待生用だった廃寮。
そしてアカデミアに上陸したオブライエンが廃寮に向かったところ、撮られたのは数年前のはずの彼の写真と瓜二つな『藤原』に襲われていた吹雪さんを発見。調査を諦めて吹雪さんの安全を優先させ、なんとかここまで逃げ切ってきたらしい。稲石さん何してたんだろ。
なぜか廃寮にいた吹雪さん、藤原の行方不明と同時期にダークネスの力に取り込まれ、セブンスターズとの戦いまで同じく消息不明だった吹雪さん、そして藤原と吹雪さんは同級生、さらに言えばその寮まで同じ……ここまで材料が揃ったんだ、僕も十代も、考えていることは同じのはずだ。吹雪さんは多かれ少なかれ、必ず何かを知っている。それだけに、こうして彼が眠り続けている間のタイムロスが惜しい。
「兄さん!」
そんな時医務室の扉が開き、予想していた顔が飛び込んできた。明日香への連絡はした覚えがないけれど、ここの担当は鮎川先生だし、まああの人なら明日香に連絡を入れるだろう。となると、それ聞いたらそりゃこっち来るよね。眠っているとはいえ規則正しく呼吸する兄の顔を見てようやく周りを見る余裕ができたのか、僕らを一通り見回すその視線が目を閉じて壁にもたれかかっていたオブライエンのところで止まる。当然の反応だろう、僕だってこんな状況じゃなければもっと彼を質問攻めにしていたところだ。だが彼女が何か口を開く前に、気配だけで察したらしいオブライエンが先回りして話し出す。
「俺も君たち同様、あの謎のカードの調査をしていた。この島に来たのはその過程で藤原優介の名が挙がったため、君の兄さんを見つけたのは偶然だ」
「久し
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