第二十四話 シュワルツの森からの使者
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だ者たちはその住処ごと炎龍に焼き払われた。もう部族の全滅は必至、そんな絶望的な状況の中彼らに希望の光が差し込める。
”炎龍をたった10人程度で迎え撃ち、片腕を落とし見事撃退した緑の人”
彼らはその噂に部族の運命を委ね、彼女に部族の宝である金剛石を持たせて旅立たせた。そして彼女は噂を手掛かりに此処アルヌスまで来たと言う訳だ。
出来れば俺もヤオ達を助けたい。部隊もいつでも出撃できる直ぐにでも出動させるべきだろう。しかし一つ大きな問題があった。シュワルツの森の位置である。
シュワルツの森は帝国との国境を大きく超え、エルベ藩王国領土の中にある。
講和交渉を水面下で推し進めている中、大軍で戦争中とはいえ越境すれば講和交渉など直ぐに吹き飛んでしまう。そんなことになれば講和を進めているピニャ皇女は反逆の疑いで死刑、この機に乗じて主戦派は講和派の一掃に掛かるだろう。今帝国と戦争中ながら戦闘が起きていないのは元老院が主戦派と講和派に分かれ争っているからだ。身内で争いながら進んで戦争をするような者はいない。だからこそ、このまま講和に持ち込んで少ない犠牲でこの戦争を終わらせたいのだ。
そんな事情もあってこの要請を受けることはできない。
「……力になれず申し訳ない」
レレイの翻訳した言葉を聞いたのだろう。ヤオの顔から生気がみるみる無くなった。
「ま、待ってくれっ!!」
ヤオの言葉を遮って俺は協力できない理由を伝えた。
だがそれでも納得できないらしい。当然だ、部族の命運を託されておいてはいそうですかと引き下がることはできないだろう。
「た、大軍でなくても良いのです!緑の人は、10人程度で炎龍を撃退したと聞いています。それならっ」
確かに少数なら越境しても気づかれる可能性は低い。だが……
「滅相もない。それでは部下に死ねと言うようなもの、そのような命令を下すことなどできませんね」
「……遠路はるばるお越しいただいたのに、申し訳ない」
「そんな……」
俺はそう告げるとヤオと顔を合わせないように部屋を出た。だが部屋を出る直前、彼女が死んだような目でこちらを見つめているのを俺ははっきり見た。
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