暁 〜小説投稿サイト〜
終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?赤き英雄
太陽の傾いたこの世界で
走る黒猫と灰色の少女

[8]前話
この空には、百を()える数の巨大(きょだい)岩塊(がんかい)()かび、風に彷徨(さまよ)っている。『浮遊島』と呼ばれるその小さな大地の上が、いま、人々が息づき住まうことのできる世界のすべてだ。


「……どうしたの?」
少女が、こちらの顔を(のぞ)き込んでいた。
「いや、何でもない。青空が目に()みたとか、そういうのだ」
カイトは軽く首を()ると、いつもの笑顔に戻した。
「なに、それ」
少女はくすくすと笑うと、辺りに誰の姿もないことを確認(かくにん)して、帽子を()いだ。
蒼い(かみ)が空と同じ色の髪が、風にほどけて流れるように、あふれ出す。
「この眺めが見たかったのか?」
「そう。
もっと高いところからとか、もっと離れたところから浮遊島を見たことはあるんだけど、ちゃんと街の中から街を見下ろしたことが、今までなくて」
辺境寄りの浮遊島に住んでいる子なのだろうか、と思う。
カイトは少女の笑顔見て少し昔の事思い出しそうなるが今ここでの自分の立場思い出して少女に言おうとしたことを止めた。
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