第五話 不安の始まり
[9/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て入渠ドックと風呂場は同一であるということになってくるのだ。
(………海原少将がそんなことを言っていたような気がする)
そんなことを思っている凰香の目の前には、無表情の金剛が仁王立ちしている。その奥には脱衣所で鉢合わせした艦娘『曙』と、その艦娘を庇うように周りを囲むように立っていた。
あの後何も言わずに立っていた凰香と時雨、投げつけた風呂桶を受け止められて固まっていた曙が立っていると、騒ぎを聞きつけた艦娘達が凰香達の元へ駆けつけ、金剛の元へ突き出されたのだ。もちろん隣には同じく突き出された時雨が立っている。
「……まさか早くも本性を現すとは、呆れを通り越して幻滅しましたヨ」
金剛が呆れたようにそう言うのと同時に、凰香の腹部に金剛の拳が飛んでくる。鈍い衝撃に凰香は顔を顰めるが、咳き込んだりはしない。
「まさか着任2日目で艦娘……それも駆逐艦に手を出す………。テートク、いえ、女性といえど人としてあるまじき行為デース」
低い声の金剛の言葉とともに腹や背中に拳や蹴りが飛んでくる。だが凰香は反抗することもなくなされるがままである。時雨もまた金剛に襲いかかろうとせずに黙ったままである。
「………どうしたんデス?何か弁明があるなら聞きマスヨ?」
「……あるわけないじゃないですか」
素直に殴られたり蹴られたりすることに疑問に思った金剛の言葉に、凰香は金剛の顔を見つめながらそう言う。すると今までの中で一番重い衝撃が凰香の腹部に突き刺さった。それによって思わず咳き込みそうになるが、寸でのところで耐える。
「自分の罪を素直に認める、ということデスカ?」
「あれは事故です。他意があって入渠ドックに入ったわけじゃありません。ただ私達に全面的に非がある。それだけです」
凰香は金剛にそう言う。
あの暖簾のマークは艦娘達の入渠ドックを示していたのだ。凰香が見覚えがあったのは、横須賀第四鎮守府で見ていたからである。そのことをすっかり忘れていた凰香達の方が全面的に悪いのだ。さらに妖精さんが凰香の足を殴ったり蹴飛ばしたりしていたのは、『この中に艦娘がいる』ということを必死に伝えようとしていた。それを理解することができなかったのだから、今回の騒ぎが起きてしまったのだ。
つまるところ、『凰香達は自身が今いる鎮守府の常識を考えられていなかったのだ』。だから今回時雨も何もせずにいるのである。
「……だから、『罰を受けるのは道理』、ということデスカ?」
「そういうことです。それに………」
凰香はそう言って金剛から曙に目を向ける。凰香の視線に気がついた曙は睨み返すことなくプイッと顔を背けてしまう。
しかし、一瞬だけ見えた曙の眼には『恐怖』という感情が浮かんでい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ