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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第五話 不安の始まり
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り図によると、風呂場は大体執務室の反対側に位置しているようだ。

「……それにしても、この鎮守府はかなり広いね。旧泊地とは大違いだ」

見取り図を覗き込んでいた時雨がそうつぶやく。時雨の言う通り佐世保第十三鎮守府は見取り図を見た限りでも、少し前までいた海軍大学並に広い。
執務室がある本館を中心に艦娘が住まう宿舎が四つ、その近くに大きな食堂、さらに建物の中に入渠ドックとは別の風呂場が四つもある。宿舎から離れた場所には射撃演習場、トレーニングルーム、温水プール、巨大な工廠、そして甘味処などが完備されており、本館、小さい宿舎と工廠、そして入渠ドックしかない旧泊地とは段違いだ。まあ旧泊地の入渠ドックを兼ねた風呂場は露天風呂に改造されているので、それだけが唯一勝っている点である。
海軍大学にいた時のことを考えると異常なまでの好待遇だが、艦娘達の戦意向上のためと言われれば納得できる。好条件な職場に加え周りには女性しかいないので、男性の希望仕官先のほとんどが鎮守府だったというのも頷ける。それを知った凰香達はその日から演習において同期を全員慈悲もなくぶちのめすようになっていったのだが。
そんなことを思いながら歩いていると、バケツのような模様の暖簾が掛かった部屋にたどり着いた。旧泊地は普通の温泉マークなのだが、こちらはバケツのマークらしい。

「ここみたいだね」

時雨がそう言って入ろうとするが、凰香は暖簾の模様を見て首を傾げていた。
それに気がついた時雨が聞いてきた。

「凰香、どうしたんだい?」
「……この模様、何処かで見た覚えがあるんだよね」

凰香はそうつぶやく。何処かで見た覚えがあるのだが、何処で見たのかがどうしても思い出せない。

(……まあしばらくすれば思い出すでしょ)

凰香はそう思うと時雨の後を追って暖簾をくぐる。すると凰香の眼に飛び込んできたのは、高級旅館の脱衣場と見間違うほど立派な脱衣所だった。
艦娘の要望なのか、バスタオルや普通のタオル、ウォーターサーバー、ドライヤーやヘアアイロンまで完備している。使えるまでに修理したボロい脱衣所とは天と地の差である。 大方艦娘達の我儘か何かでここまで完備させたのだろう。

「うん?」

凰香が服を脱ごうとしたとき、脚を何かが触れる感触がした。凰香が足元を見ると、足元には足首ぐらいの背丈の小人が必死な形相で凰香の足を蹴ったり殴ったりしていた。

「確か……『妖精さん』だったよね?」

時雨も気がついたらしく、思い出すようにつぶやく。
妖精さんとは、深海棲艦が現れ始めた頃から確認されるようになった存在である。妖精さんは艦娘の建造や身の回りの世話から装備の生産や改修、空母の放つ艦載機の搭乗員、主砲などの指揮官
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