第五話 不安の始まり
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いる鞘に納めた。
実は時雨は龍田が鋏を振るって脅してきたときにはすでにコンバットナイフを抜いていた。もし龍田が鋏で凰香を傷つけたり、天龍が凰香の胸ぐらを?んでいたら、二人は間違いなく時雨に殺されていただろう。だがそんなことをすれば凰香の立場が圧倒的に悪くなるので、時雨はずっと我慢していたのだ。
すると防空棲姫が言った。
「でも本当に我慢してたわよ。昔の時雨ちゃんだったら間違いなく手を出していたもの」
「そりゃ僕だって我慢強くなるさ」
防空棲姫にそう返す時雨。実際改二になる前の時雨だったら、間違いなく我慢せずに怒りに任せて暴れ回っていただろう。
そんな中、榛名が心配そうに凰香に聞いてきた。
「凰香さん、大丈夫ですか……?」
「ええ、大丈夫だよ。本はもう使い物にならないけどまた買い直せばいいし、服は洗えばいいからね。それよりも榛名達の荷物が汚されなくてよかったよ」
「よくありませんよ。凰香さんの荷物だけがめちゃくちゃにされたんですから」
凰香の言葉に夕立がムッとした表情でそう言ってくる。まあ気持ちはわからなくもないが、実際凰香はそこまで気にしていない。
「まあ榛名達の荷物はやられなかったけど、だからと言って艤装も弄られていないとは限らない。念のため、明日確認しに行こうか」
「そうね。ここの艦娘は人間を敵視してるけど、外から来た艦娘にはどう反応するかわからないからね。常に最悪の事態は想定しておかないと」
凰香の言葉に防空棲姫が同意する。今回の天龍と龍田の場合は凰香だけを標的にしていたが、他の艦娘はどうするかわからないため、常に警戒しておいた方がいいだろう。
そう考えていた凰香は思い出したように言った。
「ああそれと、他の艦娘がいるときは絶対に私のことを本名で呼ばないでね。一応今は『海原黒香』としてここに着任しているんだから」
「わかったよ、『黒香提督』」
「わかりました、『黒香提督』」
「はい、『黒香提督』」
凰香の言葉を聞いた時雨、榛名、夕立の三人がそう言って敬礼してくる。尚、防空棲姫は凰香達以外には姿が見えないため、凰香を偽名で呼ばなくても問題ない。
「ふぁ……」
すると凰香は大きなあくびを漏らす。そして眠そうな表情になった。
横須賀からここに来るまで一睡もしていないから、どうやら疲れが出てきたようだ。
それを見た防空棲姫が言った。
「とりあえず、今日はもう寝なさいな。私が見張ってるから」
「うん…そうする。ありがとう…防空姉」
凰香は眠そうにそう言うとコートとブーツを脱ぎ、右腕の籠手を外す。そして両壁際に置かれている二つのベッドのうち片方のベッドに寝転がる。その途端、急に瞼が重く
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