第五話 不安の始まり
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れている。
だが、残念ながら凰香にはその程度のことは一切通用しない。
「………なら私はあなたのその腕を握り潰しましょう」
凰香はそう言って壁に突き刺さっている鋏を右手で、文字通り『握り潰す』。鋏はいとも簡単に刃がひしゃげてしまい、一瞬にしてガラクタになってしまった。それを見た天龍と龍田が眼を見開いて驚愕する。
「これが最後です。そこを退いてください」
凰香がそう言うと、凰香の気配が異様なものへと変わる。それを感じ取ったのか、天龍と龍田が一歩後ずさった。
それもそうだ。凰香の身体の半分は姫級の深海棲艦、それも『災厄』と呼ばれている防空棲姫のものだ。当然艦娘は恐怖心を抱く。
凰香は金剛の元へ向かう為に、目の前にいる龍田をどかそうとした。
「っ?!てめぇ、龍田をーーーー」
「やめとけ」
凰香の行動に激昂した天龍が胸ぐらを?もうとしたとき、天龍の後ろから声が聞こえてくる。
凰香が天龍の後ろを見ると、そこに左眼が隠れた長い前髪と地面につくほど長い赤色のリボンで結んだ黒色の長髪、青い瞳の右眼、胸元まで開いた変わったセーラー服と紺色のスカート、そしてその下には黒色の帯をさらしのように巻きつけ、お腹や太ももなどところどころ露出させた姿をした女性が立っていた。姿からして、おそらく重巡洋艦の艦娘だろう。
すると女性の姿を見た天龍が舌打ちして言った。
「……何の用だ、『加古』」
「一応あたしの方が年上なんだから、敬語くらい付けろっての」
天龍の言葉に『加古』と呼ばれた艦娘が頭を軽く掻きながら面倒くさそうに返す。
加古は天龍と龍田の間を通り、凰香の前に立つ。そして、懐から一枚の写真を取り出して凰香に見せてきた。
その写真には天龍と龍田、そして駆逐艦と思われる艦娘が凰香の荷物に泥水をかけている姿が写されていた。
「加古っ!!」
「これはこいつらが勝手にやった。金剛のやつは一切無関係だ」
天龍が手を伸ばして写真を奪い取ろうとするが、加古はスルリと避けてそのまま凰香の手に写真を握らせ、そのまま風のように立ち去っていった。
凰香は受け取った写真をひらひらさせながら天龍に言った。
「……それで、これがあなた達がやったっていう証拠ですが?」
「……行くぞ、龍田」
凰香がそう言うと天龍が背を向けて部屋を出ていき、その後ろを龍田がついていく。
二人の姿が見えなくなると、凰香はコートのポケットに写真をしまってから言った。
「………よく我慢したね、時雨」
「……加古って艦娘が来てくれなかったら、今頃あの二人は八つ裂きになっていたよ」
時雨はそう言って、『手に持っていたもう一本のコンバットナイフ』を太ももに付けて
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