栄光なき軍師 〜小さいおじさんシリーズ18
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…うむ。確かにこの件に関しては卿にはそこまでの非はないな。軍師としては純粋に尊敬しているが…」
「仕事は出来るが私生活では関わりたくない武将、荀ケ!それは荀ケ!!そういうわけですな!!」
「云いやがったああぁぁあああ!!!」
とか何とか叫びながら豪勢が白頭巾に飛びかかり、口を塞いで抑えつけた。端正も戸惑いつつも白頭巾を抑え込みにかかる。
「貴っ様ぁ〜!!余の話を聞いていただろうが!!何の為にイニシャルトークにしてたと思うんだ馬鹿なのか!?」
「…全く、これ以上面倒くさい奴が増えるのは御免だぞ…!」
本当だよ、今のところ辛うじて人死にだけは免れているというのに、自動的に死ぬ小人とか勘弁してくれよ…!そわそわしながら襖の方を伺っていると。
無情にも、襖はすらり…と動いた。
暗がりに佇んで居たのは、眉目秀麗、だが何処か病魔を感じさせる線の細い男だった。神経質な程一糸乱れず纏められた鬢は、頭巾を取った白頭巾に少し似ている。しかし何というか…睫毛の影が落ちる白い頬といい、形はいいが妙に青ざめた唇といい、禰衡ではないが、全体から醸し出す陰気な雰囲気はまさに弔辞を述べるに相応しい。男は凍りつく豪勢をじっ……………と見つめると、疲れ切った微笑を浮かべた。
「……お、おう……」
辛うじて応じた豪勢の横をするり…とすり抜け、荀ケと思われる男は手に持った縄を放り投げ、アルミ製の本棚に器用に掛けた。そして素早く『丁度いい』高さに縄を調整して、結び目を横にずらした。
「ほほう、名人芸ですな」
「うるっせぇよ何が名人芸だ、あとで殴るからな!!…おい貴様、手伝え」
「お、おう…」
豪勢と端正は瞬時に荀ケに飛びかかり、豪勢がもがく荀ケを抑え込んでいる隙に端正が縄を切断する。そしてその縄を使って荀ケを縛り上げた。肩で荒い息をしながら豪勢がどすん、と腰を降ろした。
「……いやに手馴れているではないか」
「半期に一度この騒動に付き合わされてんだよこっちは…!!あの時は遅れをとったが、今回はそうはいかんぞ!!」
えー…?なにこれ。なにこの関係性。
「さて、と。…おい貴様ぁ!!何でこいつを呼び出した!?」
つかつかと白頭巾の横に歩み寄り、豪勢が拳骨で思いっきり頭巾部分を殴った。…なんやかんやで、白頭巾はしょっちゅう殴られている。大抵、自業自得だが。白頭巾もいい加減慣れたのか、ごく普通に落ちた頭巾を被り直した。
「えぇ、ずっと気になっていることがあるのですよ」
「荀ケのことか!?」
「いいえ」
私たちのこの身体に『死』はあるのか。
「―――云ってのけたぞこの男。この男は一応、魏の重臣なんだが余の話を聞いてたか!?貴様は鬼か!?」
「引くわー、ここ最近の卿の発言で一番引くわー」
俺も引くわ。すげえなこの男
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