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俺の四畳半が最近安らげない件
栄光なき軍師 〜小さいおじさんシリーズ18
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た」
「お、おう…」
端正が曖昧な表情で返事をした。何かが納得しきれていない顔だ。
「あー…つまりだ。彼は…空の箱を渡された結果自殺した、と」
「そうなりますな」
「卿、一つ聞くが」
端正が豪勢の方をちらりと伺うと、豪勢は心底げんなりした顔を上げた。
「……んだよ」
グッダグダだよこの丞相。
「卿の国では、死を賜る部下に空の箱を贈るという通例があるのか」
「ねぇよそんな通例!!」
ダンと床を打って豪勢が立ち上がった。
「…貴様、今少し違和感をおぼえただろ!?そうなんだよ、余はそこまで陰険な意味で空の箱を贈った訳じゃない、ただの腹いせというか、ちょっとした悪戯のつもりだったのだ!!箱開けたらホラなんもな〜い、サプラーイズ!みたいな!?」
「お…おう…そうだよな…俺の感覚がおかしいわけじゃ、ないよな…」
「そうなんだよ!貴様も分かるだろ!?あいつ、いっっっつもそうなの!!こっちが思いもしない深読みしてそれが真実と思い込んでひっそり自己完結して、いきなり行動に移すの!!超めんどくさいんだよあの男!!」


あぁ…俺の感覚も間違ってはいなかったか。


30センチ足らずの三国志に関わるおっさんが俺の四畳半に出没するようになり、俺も彼らを理解する為に三国志に目を通すようになっていた。…正直、彼らは『正史』より『演義』寄りな発言が多い気がするので演義も読んでいるのだが、魏で随一の軍師だった荀ケは、白頭巾がさっき云った通り…何やら腑に落ちない理由で自殺する。
「ううむ…想像力、というのは相手の様々な行動パターンを先読みする必要がある軍師には、必要不可欠な要素ではあるのだが、こう行き過ぎるようではな…」
「それな!?ほんとそれな!?史実には残ってないんだが、あいつ似たような状況で何度か死にかけてるから!!」
「―――それ、聞いてもいいか」
豪勢が一瞬、ぐいと押し黙った。
居住まいを正してそれとなく聞き耳を立てていた白頭巾が浅いため息をつき、端正が柄杓を冷たい麦酒の池に沈め、ぐいと呷ったその時、意外にも豪勢はぽつりと話し始めた。
「―――貴様が云った通り。奴は類稀なる『想像力』で周辺諸国が取り得る『最悪のシナリオ』を誰より早く嗅ぎつけ、対策をとった。最たる例があれよ、?州における張?と呂布の反乱をいち早く『想定』、その動きに周辺諸国が軒並み呼応するという最悪の展開をも『想定』し、濮陽の夏候惇を呼び寄せて撃退した、あの戦よな」
「聞き及んでおります。軍師たるもの、かくありたいと心に留めたベストバウトでございました」
白頭巾がこんなに手放しで褒め称えるとは珍しい。…ベストバウトとかいうチャラい言い回しが少し引っかかるが。
「俺もだ。敵ながら彼の軍師は俺の目標でもあった。…戦術レベルでは割と強気な用兵をする軍師だったが、長期
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