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最低で最高なクズ
ウィザード・トーナメント編 前編
運命はコーヒーの味?
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始める。カウンターの奥から一気に香ばしい香りが漂い始めた。俺は別段コーヒーが特別好きでもましてや嫌いでもない。提供されればありがたく呑むし、たまに呑みたいと思うことはザラにある。ただいつもそう思っているわけじゃない。


俺が一番好きなのは「ミルクティー」だ。とくにこれと言ったこだわりはないが少なくとも「ディンブラ」とか「ダージリン」とかの茶葉で淹れてくれる紅茶のほうが嬉しかったりする。


それ以外の茶葉だと個人的にミルクとマッチする感じがしない。前に違う茶葉で淹れたミルクティーを呑んで妙な違和感を感じたくらいだから多分、こだわりとは言わなくても少しのオーダーはあるんだと思う。


数分後にマスターが程よく体が温まりそうなコーヒーを出してくれる。コーヒーカップの模様と同じものが入った皿に、その上に乗せたコーヒーカップの横に角砂糖が2つ。そこに追加で小さなミルクポットがやって来る。


カップを取り口へ運んぶ。苦い。コーヒーらしい何とも被らない独特の苦味と風味。これらが静かに上品に俺に目覚めを告げる。意識の覚醒を促されているようだ。


次にミルクポットを取り、コーヒーに2回し、再びカップを取り口に運ぶ。先ほどの苦味の後にほんのりとまろやかな甘みが追い掛ける。ブラックでも呑めなくはないが俺はカフェオレのほうが呑みやすい。


最後に角砂糖を入れて軽く混ぜる。口に運ぶとダイレクトに甘さが伝わり、その後にコーヒーの風味が通り抜けていく。この後の風味が無ければ俺はコーヒーとは思えないくらい甘みが強い。


1杯のコーヒーで3段階に分けて楽しめるのだから、一杯が300円以上だとしても文句は言わない。今はさっきの青年の奢りもあって無料で楽しめている。


ふとマスターが話し出した。それは自分よりも圧倒的に人生の先駆者で有るが故の語り()としての優しさが見え隠れしていた。


「運命とはコーヒーの味のようだと私は思いますが、お客様はどうでしょうか?」

「運命はコーヒーの味?」

「はい。コーヒーは手間を掛ければ掛けるほど、上質な仕上がりになります。そこに至るまでの労力はただその至高の一杯のために尽くされるのです。人の運命というものも同じように、そこに至るまでにどれほど自分が自分に尽くすことができるか。その結末は自身が自身にどれほど手間を掛けたかに比例します....些か言葉数の少ないもので申し訳なく思いますが。」

「.................。」


「運命はコーヒーの味」そんなこと今まで考えたこともなかった。そう思うこと自体なかった。改めてどんなであれ、人生の先輩の話は聞いておいて損はないと感じられた。


コーヒーを呑み終えた俺は「ご馳走様でした。」とだけ言ってカフェを出た
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