ギルド登録
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「いらっしゃいませ。ギルド登録でしたらあちらへ、クエストでしたらあちらへどうぞ!」
扉を開けるとすぐに若い赤髪の女性が接客してくれた。
「――うぉ。あ、はい。」
思わず喜悦の声をあげてしまう。
ギルドに入ってみたいと思っていた昔の俺を懐古する。
あの頃の俺は夢にもみなかったであろう。
俺は案内されたほうへと向かう。
灰色の石レンガの作りで、古色蒼然だがそこがまたいい。
俺は自然に数人並んでいる受付口の前に立つ。
並んでいるだけなのに、気持ちが高揚してしまう。
そして順番が来た。
「すいません。ギ……ギルド登録をしたいのですが。」
「わかりました。それではここに人差し指を置いてください。」
右か左か迷ったが、優柔不断な奴と思われたくないためすかさず利き手の右手を出す。
一瞬その機会が光った。
「終わりです。それではこのギルドカードに人差し指を置いてください。」
「はい。」
俺はギルドカードの上に人差し指を置く。
何かが書き込まれているようだがよく見えない。
「終わりました。あなたは、いたって平凡なステータスのようですが……。」
「ですが……?」
「きようさがとても高いですね。裁縫職人をお勧めいたしますよ。運も少し高めですし……。」
「結構です。」
俺は平凡という言葉に少し肩を竦める。
「それでは、職業選びに入ります。貴方様のステータスでいいますと……。冒険者。それか戦士。ですか
ね……あ、あと裁縫職人になるという選択肢もありますがどうですか?」
「結構です。」
「そうですか。では冒険者・戦士・さいほ・・どれに致しますか?」
「……冒険者で。」
「……そうですか。わかりました。少々お待ちください」
なぜだか受付の人が少し悲しんでいる。
―――おい。と言ってやりたくなる。
そんなことを考えているといつの間にか受付の人は戻ってきていた。
(結構早く終わるんだな)と感心する。
「はい。完了です。代金は5000セントになります。」
5セントあったら、安い防具を一式買うこともできるような値段だが、惜しまずに払う。
「どうぞ。」
「ちょうどいただきました。それではあなた様のご武運を!」
よし!なんか冒険者としての将来を嘱望されはしなかったけど、頑張るか……。
そう思い俺はクエスト掲示板の前に立つ。
だが俺はそこでふと忘れていた重要なことを思い出す。
「……装備……どうしよ……。」
財布の中には1000セントしかない。
そこから俺のバイト生活は始まってしまった。
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