第59話<艦娘の志>
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ると父親は真顔になった。
「人間は外見だけで判断はできない……」
そう言いつつも、気恥ずかしいのかちょっと苦笑した。
「もっとも彼女たちは『艦娘』だがな」
……そういえば山城さんや利根と父親は、ずっと飛行機の話をしていたな。
父親は続ける。
「お前も直ぐに分かる日が来る。彼女たちは、この国を誰よりも愛している。
それに何があっても純粋に国家を護り抜ける志だって持っている。まさに彼女たちは現代の志士なのだ」
「そう?」
(かなり持ち上げたな、お父さん)
もちろん寛代や日向を見ていると純粋で一途なのは分かる。
彼は通行人を眺めながら言った。
「父さんは、もう退役組だ。だが、お前はまだまだ若い。それにあの娘たちは、もっと若いだろう。
力を合わせて国のため、世界平和の為に、しっかりやれ」
「うん」
父親は、だてに空軍エースだったわけじゃないんだなと、そのとき改めて思った。
(お父さん、ありがとう)
そのとき玄関から五月雨と寛代が勢い良く飛び出してきた。
五月雨は青い髪に、グリーン系のグラデーションの入った浴衣だ。
「し、司令官……見て下さい。は、恥ずかしいけど綺麗です、浴衣って」
確かに彼女の青い長髪と感じが似ていて、うまく調和している。
(そうか駆逐艦娘も浴衣を着ると急に日本人らしく見えるな)
五月雨は、はにかみながらも私たちの前で一回りして見せた。長い髪が意外にも軽くふわっと舞った。
『……』
私も父親も、そして通りを行きかう人たちも注目する。五月雨は大人しい子だけど、浴衣のインパクトは大きい。
彼女は微笑んで立ち止まった。
反対に、赤い浴衣を着た艦娘が……「寛代か?」
すると彼女は立ち止まらずに私を狙って突進して来た。
「だから寛代、やめろって!」
せっかく可愛い着物姿なのに……おいおい!
それでも通りで、しつこくカンチョーしようとする寛代。
「この期に及んで下品だぞ!」
父親も腕を組んで苦笑している。
だが私は逃げ回りながら思った。これは彼女の照れ隠しなのかな? ……と。
「ほら、お前も早、着替えぇだ!」
母親が玄関から大声で叫んでいる。父親は早く行けと言うしぐさをした。
「やれやれ」
既に街は暗くなりつつあり太鼓の音が遠くから聞こえて来る。
「ああ、お盆だなあ」
夏の香りを感じながら、私は家に入った。
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