35:大切なもの
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俺は手を止め、バッと向かって右を見た。同時に、ユミルもまたその方向を凝視する。
なにかが……急速に此方へと近付いてくる。
ユミルも《聴音》で、その近付きつつある存在に気付いたのだろう。
「「っ!!」」
俺達は互いに武器を突きつけあったまま、バックステップで再度距離を取り合い、近付いてくる何かに備える。
やがて、その方向……林の奥から、草木の枝や葉がガサガサと揺れ、近付く気配が濃厚となってくる。
そして出てきたのは……
「「なっ……!?」」
俺達二人は、またもや同時に驚きの声を上げる。
それは高い速度を保ったまま草むらから飛び出し。
俺とユミルの間を『薄いオーロラのような軌跡』を残しながら駆け抜けて横切り……この森の中の空き地の中央で、ようやくその足を止めた。そして振り返り、『紅い目』で俺達を眺めてくる。
――小さな純白の体。赤い瞳。4本の蹄。そして……青白く立ち込める鬣と、一本の白銀の角。
そう。それは……
「……み、《ミストユニコーン》!?」
「な、なんで、こんなところに……!?」
ようやく俺は……この依頼の最終目標に邂逅を遂げることができたようだ。
まず第一に……美しい、と思った。息を呑むほどに清廉で、神聖で、犯し難く穢れない姿だった。
この緊迫した状況では些か場違い甚だしいこととは分かっているが、そう思わずに入られなかった。
そして何故かミストユニコーンはこちらを振り向いたまま、再び逃げ出そうとしない。その無垢な丸い瞳が、俺達二人を見つめている。
そこに……
「……〜〜っ!!」
ギリリ、と大鎌の柄を鳴らしたユミルが突如顔の血相を変え、十数メートル先のユニコーンに向かって駆け出した。
すると、
「なにしてるのキリトッ!! 今すぐユニコーンを倒しなさい!!」
背後から、リズベットの鋭い叫び声。
「ユミルの全ての目的は、そのユニコーンなのよっ!? ユミルより先に倒してしまえば、きっと……彼を止められるわ!!」
「……っ!」
俺はそれを聞き、ユミルに数秒遅れて駆け出す。
ユミルは俺の数メートル前を全力で駆けているが、やはり今の彼の敏捷値は大したものではない。
対してユニコーンは一歩たりとも動かない。仮想世界のモンスターとはいえ、俺達二人の鬼気迫る圧力に押され、慄いているのだろうか。
「ハァッ……ハァッ……!!」
徐々にユミルに追いつき、近付く事で彼の必死な息遣いが聞こえてくる。
かといっても、気付けばユニコーンとの距離も、あとわずか数メートル。
俺が彼の真横に追いついた時には、彼はもう……大鎌を振り上げてい
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