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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
35:大切なもの
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あの決闘の時に見せ付けられた、冴え渡る武才がそれをさせてくれない。彼とて、あの決闘で俺の剣筋を大方理解していたのだ。

「く……せらぁあっ!」

「っ……」

 俺は何とか押し留めた大鎌を気合いの声と共に僅かに押し戻し、その隙にバックステップで再び距離を取る。
 ……唯一の救いは、今の彼の武器が巨大な大鎌に換わっている事で、俺との決闘の際に見せた、嵐のような独特な武器の回転攻撃や乱舞での激しい追い討ちをしてこないことだ。また、やはりソードスキルも使ってこず、足も以前よりさらに遅くなっているが、かと言って此方の俊足さを利用した回避や、脇や背後からの奇襲を許すほど彼の棒術や《見切り》と《先読み》は甘くはない。

「……さっきはあんなに偉そうな事を(うそぶ)いておいて、キミの力はその程度なの? 興醒めだよ、《黒の剣士》!」

「……ハァ……ハァ……」

 じんじんと痺れる右手を意識しながら、俺は一つの選択肢に迫られていた。

 ……やはり、《二刀流(アレ)》を使うしかないのか?

 俺は万が一の事に備え、この階層にやってくる前に予めスキルスロットに《二刀流》スキルをセットしてはあった。
 しかし……これを使えば……。
 俺は、これまでも何度も苛まれた迷いに襲われる。
 ……それを表に出さぬよう、それでも俺は……手早く片手でウィンドウを呼び出して操作し、背にもう一本の剣……青白の剣《ダークリパルサー》を装備する。

「…………!」

 それに警戒したようにユミルが即座にガシャ、と大鎌を構える。
 別段、背に二本の剣を装備するということは珍しい事でも不可能な事でも何でもない。彼から見れみれば今の俺のこの姿は、痛み始めた剣から新しい剣に取り替え、しつこくあがこうとしているのだと思っていることだろう。
 しかし……ここで俺が二本の剣を両手に握り、振るってしまえば……その時点で、ユニークスキル《二刀流》の存在がとうとう露見してしまう。
 ……本当に、いいのか?
 心のどこかのもう一人の俺が、そう俺に問いかけてきている。
 この迷いは大部分が己の保身、それに下手な注目を集めるのが嫌という……半ば我侭のそれだ。
 だが……

 そんなこと……今の、俺だけでなくアスナ達みんなの危機と比べれば……なんだというのだ……!

 俺はもう二度と……サチのようなことを、繰り返したくは無い……!!

 ――もう……迷っている場合じゃない……!!

 心の中の、さらにもう一人の俺が、そう大きく叫んだ。
 俺はギリ、と再度強く歯を噛みながら、ついに……左手でもう一本の剣を背から引き抜こうとした。


 その時だった。


 ……俺の《索敵》スキルに、新たな反応が現れた。

「「…………!!」」

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