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彼願白書
リレイションシップ
ミーティング、マーチング
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黒い飾り気のないエプロンに、やはり飾り気のない白いブラウスと黒いロングスカートという、カラー写真で撮ってもモノクロな格好に、一度として染めてないという黒い艶髪のショートカットにキツい目でそれなりに美形という、メガネがあったら間違いなく、壬生森が顔を合わせたくない女性ランキングでそこそこ上位に来るとある艦娘に似たような身形なのだ。

当人にはなんの落ち度もないが、壬生森の精神衛生上、なんら気構えなく相対したくない姿であることは、どちらに対しても不幸であったと言うより他にない。

そして、二つ目に、この二人に共通する人間関係がある。
壬生森とこの館の使用人を繋ぐ人間関係は、ある少女が間にいるのだ。

「御嬢様のことです。」

「前言撤回。君の言いたいことは一から十までわかった。」

「わかったなら相応のリアクションを求めます。」

「残念だがインプットとアウトプットは同じ処理速度にならないものだよ。」

「ヘタレ。」

「不名誉な称号だな。」

「ですが、相応です。」

「そこは認めよう。」

「では、改善しましょう。」

「目玉焼きを生卵に戻せ、という無理難題を言ってるが?」

「サニーサイドアップをタンオーバーにしろ、という程度と思いますが?」

ここまでやり取りして、壬生森は露骨にウンザリした顔をする。
壬生森は観念したかのように、問答無用でグラスに注がれたお代わりのハーブティに口づける。

「私達はもう、遅すぎたんだよ。私達の関係は、行き止まりで終わったままなんだ。」

「似た者同士で相変わらずだねー。」

予想していた声ではない声が聴こえた壬生森は後ろを振り返る。

「本当に、相変わらず過ぎるよ?提督。」

壬生森達のいるテラスに繋がるガラス扉の向こう。
そこには、翡翠とも瑪瑙とも言える鮮やかな葵の長い髪が風に揺れる。

「決着がハッキリとするまで、一度でも走り出した乙女は止まらないんだよ?ちゃんとわかってる?」

壬生森が最後に見た時より一回り、成長したらしい身体に真新しいブレザーの制服をラフにめかしこんで。
壬生森が暇を潰して待っていたのは、彼女の来訪だった。

「ちーっす、提督。相変わらず、ダメ男してるねー。」

右手をひらひらと振りながら、わざとらしく片目をウィンクして。
彼女は自分の見た目の完成度をキッチリ理解した上で、可愛らしい自分を演出している。

「鈴谷か。待っていたぞ。」

「お待たせしちゃったねー。やっぱり制服で車を転がすのは失敗だったよ。お巡りさんにバンバン止められちゃって。」
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