第二十三話:連行
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殿の死に様を一席ぶちに行けば良いのでしょうか?」
「いいえ、彼女らは貴方の死体をお望みだ」
男の目がキラリと光ると、スーツの内ポケットに右手が入る。しかし、その腕は抜き放たれることはなかった。ラシャの脚が居合抜きのように閃き、男の右腕の動きを抑えるとともに、それを粉砕していた。同時に手錠が引き千切れ、両手が自由となったラシャはそのまま男の顔面に拳を叩きつけて昏倒させた。
「やはり情報通りのようですね」
死角から声が聞こえた。そこには数名の兵士を従えた中年女性が立っていた。高級な化粧で巧みに糊塗してはいるが、時の流れによる摩耗はそのメッキを巧妙に剥がしていた。
「ボーデヴィッヒ少佐が死亡したのは単なる慢心だけではないようですね」
女性はハンドサインで周囲の兵士たちに何らかの指示を出した。兵士たちは機械作業のようにラシャを取り囲んだ。肩に下げていた短機関銃には手を添えるだけで向けてくる気配はない。
「先程は無礼を働きました。緊急事態であるがゆえに貴方の上司には事後承諾という処置を取らせてもらいました。許される行いではないことは承知しております」
そう言って深々と頭を垂れた女性に対して、ラシャは漸く話の通じる人間の登場に少しばかり安堵した。
「およそ7時間前、我がドイツのIS部隊、黒兎部隊が突如として指揮系統を外れて暴走を開始し、辺境基地を占拠しました。彼女たちの要求は隊長であるラウラ・ボーデヴィッヒ少佐の事故死の真相開示と、事故を間近で見た唯一の証人である編田羅赦。つまり、貴方の身柄の要求です。72時間以内に身柄の引き渡しが行われない場合、彼女たちは保持しているISの総てを用いて無差別な破壊活動を行うと通告してきました」
ラシャは耳を疑った。
「破壊活動?現職の軍人が!?何かの間違いじゃないですか?こんな金にもならないことを何で……」
「彼女たちは国への忠誠心よりも、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐個人に対して盲目的な崇拝をしている隊員が多いと内部監査より調査済みです。対処を講じていた矢先に先を越されました」
ラシャはあまりの展開に頭痛を覚えずにはいられなかった。同時に学園長が零していた愚痴を思い出す。
「やはり、生まれが関係しているからですかね?噂ではドイツの軍部はデザインベビーを兵器開発の実験に非合法に使役していると聞きますが」
「それを言われると此方は何も言えませんね。そもそも、デザインベビーの研究は前政権が手動で行っていた事です。我々も此処数年で全体を漸く把握できた状態ですからね」
詭弁だ。と、ラシャは感じた。どのような形であれ、前政権の研究を引き継いで今日まで存続させていたことは想像に難くない。一介の用務員だからと言って都合の良いことばかり並べ立
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