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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十五話 繁栄と衰退、そして……
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統治者達は利権と政争にのみ関心を持つ衆愚政治に堕落した。本来なら選挙という手段で政治家達を選択できる連邦市民もその権利を放棄した、能力有る政治家を選べなかったのか、或いは存在しなかったのか。民主共和政は自浄能力を失っていた……。
ルドルフ大帝が生まれたのはそういう時代だった。大帝が現状に不満を持ったことは間違いない。何とかしなければ、そう思った事だろう。強力な政府を、強力な指導者を、社会に秩序と活力を……。そう唱えた大帝に連邦市民は終身執政官として連邦の統治を預けた。だが大帝が選んだのは民主共和政による統治ではなく専制君主制による統治だった。
終身執政官として民主共和政を維持する事も出来たはずだ。それなのに何故大帝は専制君主制を選んだのか? 多くの歴史家が自己の無謬性を過信した独裁者が専制君主制を選んだのは当然だと答えている。
だがわしはそうは思わん。大帝は民主共和政を否定したのではない、当時の銀河連邦市民を、人類を否定したのだと思う。人類、未だ民主共和政を運用するに能わず、人類が己の手で統治者を選ぶなど無謀なりと……。終身執政官では自分の死後、また銀河連邦は衆愚政治に戻るかもしれないと考えたのだと思う。
それを防ぐには連邦市民の支持を必要としない指導者が必要だと考えた。もっとはっきり言えば連邦市民に主権など不要だと考えた。秀でた人物が頂点に立ち、その人物が他の優れた人物を選抜して一握りの優秀な人間達が統治者として国を治めるべきだと考えたのだ。その他大勢は黙って従えばよい、ルドルフ大帝が専制君主制を選んだ理由はそれだと思う。
大帝は己の無謬性を過信した独裁者だったのではない、人類を信じる事が出来なかっただけなのだ。逆に言えば銀河連邦末期の衆愚政治はそれほどまでに酷かったと言える。
大帝は連邦においては一政治家として活動もした。その時何度も腹立たしい思い、嫌な思いをしただろう。そして民主共和政という衆愚政治に、それを生み出した連邦市民、共和主義者に幻滅したに違いない……。
大帝が共和主義者を弾圧したのもそれが理由だろう、劣悪遺伝子排除法に反対した事はきっかけでしかなかった。大帝を弾圧に駆り立てたのは人類を信じ民主共和政を信じる者達への憎悪だったとわしは思っている。それほどまでに衆愚政治を望むのかと……。
貴族制度を作ったのも帝室を守る藩屏を作る事だけが目的では無いだろう。指導者層を固定化し、爵位を与える事で誇りと矜持を持たせようとした。それによって衆愚政治を防ぐのが真の目的だったとわしは考えている。
当然だが領地を与え、非課税にしたのも恩賞ではない。統治の一端を任せたと考えるべきだ。星系レベルでの統治を行わせることで行政官としての、統治者としての能力を向上させたのだ。その事が帝国の重臣としての識見に繋がると
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