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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十五話 繁栄と衰退、そして……
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う事だろう。実際、記述内容にはかなりルドルフ大帝を批判的に書いた部分がある。

「構わん、元々は士官学校に有ったものだからな」
「士官学校? その本が士官学校に有りましたの?」
「うむ、ある生徒が学校にこれを取り寄せてくれと頼んだそうだ」
わしが本を手で弄ぶと妻は黙ってそれを見ている。ややあって躊躇いがちに問いかけてきた。

「その生徒というのは……」
「お前も想像はつくだろう、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、あの男だ」
「……」

リヒテンラーデ侯はあの男は帝国の弱点を知り尽くしていると言った。だからかもしれん、あの男の事を知らねばならないと思った。フェルナーに尋ねるといつも図書館で本を読んでいた、何かを考えていたと答えた。多分帝国とは何なのかを考えていたのだろう……。

気になってあの男の読んだ本を調べた。色々な本を読んでいる、軍事関係以外にも法律、経済、政治、歴史、社会……、幅広く読んでいた。確かに、あの男は帝国を知ろうとしていたようだ。

幾つか気になった本が有った。その内の一冊がこの本だ、本来なら士官学校には存在しないはずの本……。ヴァレンシュタインが学校側に取り寄せを頼まなければ存在しない本だった。取り寄せの理由は民主共和政の欠点を理解するため……。

本来なら取り寄せは不可能だった。だがヴァレンシュタインが優秀な生徒で有った事がそれを可能とした。士官学校二回生の時点で既に物流技術管理士、船舶運行管理者の資格を取得していたのだと言う……。ちなみにその翌年、彼は星間物流管理士の資格を取得、さらに翌々年には帝国文官試験に合格した……。

「どんなことが書いてありますの?」
「銀河連邦末期のさまざまな問題、そしてルドルフ大帝がそれに対してどのような対策を取ったか。それによる成果とそれが現在にどのような影響を与えているか……、そんなところだな」

「……貴方はそれを読んでどう思われたのです」
「そうだな、……貴族など滅ぼすべきだと思った」
わしの言葉に妻が驚いたように目を見張った。その表情が可笑しかった、わしが笑っている事に安心したのだろう。妻がほっとした様な表情を見せた。

「……過激ですわね、貴方らしくもない……」
「そうかもしれん、ここ最近貴族というものにうんざりしているからな。 だがわしがそう思ったのだ、あの男も同じ事を思ったはずだ」
「……ヴァレンシュタイン、ですか……」

「そうだ。……そしてルドルフ大帝が今の世をご覧になれば、やはり同じ事を考えられたに違いない」
「貴方……」
妻がまた驚いている。だがわしは取り消すつもりは無い。大帝がこの場におられれば間違いなく貴族を滅ぼしたはずだ。
「アマーリエ、まあ聞いてくれるか」

銀河連邦末期、連邦政府の統治力は著しく衰えていた。
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