その感情に、名前を。
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ああ、神様。
滅神魔導士に縋られたって助ける気にはならないと思いますけど、ああ神様。
これまで完全な無神論者で、何年も前から神なんていないんだとずっと思い続けている奴なんて救う気すら起きないとは思いますが、それでも神様!
(……どうして、僕は)
ちらり、目線だけを小さく上げる。これが夢であればいいとは思うけれど、何度見ても向かいにいる人の姿は消えもしないし変わりもしない。
緩やかな流れをそのままにした青い髪に、退屈そうに窓の外を眺める青い瞳。他の青とは違った色合いのそれは、間違いなく彼女のそれで。
(ティアさんと二人っきりで仕事に行く事になんてなったんでしょうか……!)
今のアランに縋れるのは、もう神様くらいなのだった。
事の発端は、一時間ほど前に遡る。
「アラン、仕事か?」
「はい。そんなに難しい内容でもなさそうだし、一人で行ってきます」
依頼版から依頼書を一枚取って、受注してもらうべくバーカウンターの方へと足を進めていたアランは、カウンターに腰かけるマカロフに声をかけられていた。
普段はウェンディやココロ、時々ライアーと仕事に行くアランだが、今日はそうもいかない理由がある。女子二人はエルザに連れられてケーキバイキングに出かけているし、ライアーはチームでの仕事で朝から出ているのだ。もちろんそれ以外のメンバーと仕事に行くという選択肢がない訳ではないのだが、じゃあ誰を誘うのかと言われると返答に困ってしまう。ギルドには馴染んだつもりなのだけれど、それでもやっぱりついつい一線を引いてしまうのはもう癖だ。
それに、丁度いい機会だとも思う。そろそろ妖精の尻尾での仕事にも慣れておきたいし、そこまでの難易度でもなさそうなこの依頼でなら、滅神魔法の勘を取り戻す事に少しでも意識を回せるかもしれない。
「ふむぅ…」
そう思って選んだ依頼だったのだが、マカロフは困ったように眉を寄せている。
「マスター?…もしかしてこれ、誰か予約でもしてました?」
「いや、そういう訳ではないが……むむ…」
何だか歯切れの悪い受け答え。少し嫌な予感がする。
依頼内容自体は、別にこれといって特別なものではない。村の近くの森で魔獣が暴れているから討伐してほしい、という、このギルドじゃ珍しくもない討伐依頼だ。依頼先は列車で十分もかからない位置にあり、その魔獣とやらもアラン一人で十分太刀打ち出来るであろう相手である。
ならば何故。首を傾げると、一つ息を吐いたマカロフが口を開く。
「先日の定例会で聞いた話なんじゃが…最近この辺りで、本来別の地域に生息するはずの魔物が目撃されたらしくてのう」
「?…単純に、生息地域が変わった
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