その感情に、名前を。
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をクロスさんが絶句させる、なら解りますけど」
「……とりあえずだ、フィジックス。お前がそんな事をするとは思っていないが、念の為だと思ってくれ」
「は、はい」
「アイツの前でヒルダを愚弄するな。ティアの事に関して怒った主と同等がそれ以上には怒るし、無表情で乱射してくるから主より怖い。主ほど面倒くさくはないが」
「うわあ……何というか…お疲れ様でした」
「ほぼスバルが片付けたから、俺達はほとんど何もしていないはずなんだがな……何だか、どっと疲れた…」
真剣に忠告してくるライアーの顔に、その時の事を思い出したのか恐れがじわじわと浮かんでくる。余程恐ろしかったのだろう。まあ確かに、あのスバルが無表情で乱射を(しかも外さずに)して来たら怖い。判断基準がシスコンを大爆発させたクロスであった上でのこの評価、見てみたいような遭遇しないまま一生を終えたいような、複雑な気分である。
「そっちはどうだった?怪我とかはないか?」
「大丈夫です。ティアさんに頼りきりになってしまいましたけど…」
誘拐されて傅かれたりもしましたけど。とは口に出さない。内心で留めて、いつも通りにこりと、それでいて少し申し訳なさそうに笑ってみせる。余計な事を言う必要はないのだ。そんな事を言ったら心配させてしまうし、話が大きくなってしまう。それはアランの望むところではなかった。
……のだが、ライアーはどこか心配そうな目でこちらを見ている。気遣うような視線に内心焦りながら、平静を装って問いかけた。
「どうかしました?」
すると、ライアーはそっと目を逸らす。少し言いにくそうにしながら、静かに首を傾げた。
「いや、勘違いかもしれないんだが……その、何かあったのか?」
「え?」
「上手く言えないんだが、何かが違うような……すまない、多分俺の気のせいだ」
何かが違う。ライアーの言葉を反芻する。
自分では置いてきたつもりだったが、引き摺って来ていたのだろうか。あの地下室の牢屋から。少し考えて、それはないなとすぐに否定した。ここまで持ってくるほど、あの男に抱いた憎悪は価値のあるものでもない。今のアランには必要ない、否と切り捨てたものだ。
「大丈夫ですよ、ライアーさん。僕はいつも通りですから」
「そうか…?……ならいいんだが、無理はするなよ?」
ぽん、と頭に手が乗せられる。数度滑るように撫でた手が離れて、思わずその手を目で追った。その視線に気づいたのか、ライアーが不思議そうにこちらを見る。
「どうした?」
「……いいえ、お腹空いたなって。軽く何か食べません?」
「お前の“軽く”はそこそこ重いんだが……まあ、今日は昼を食べ損ねてるし…いいか」
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