その感情に、名前を。
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とかじゃないんですか?気候とか気温とかの影響で、元の地域では暮らしにくくなったとか」
「うむ、最初はその説が有力だった。が、その中に本来なら寒冷地にいるはずのアバランチが見つかり……流石に高山や寒冷地で目撃される魔物が森にいるのはおかしい、と」
「ああ…それは確かに」
アバランチ。その姿を見た事はないけれど、名前だけなら聞いた事がある。
二足歩行の、翼を持たない竜族。マカロフの言った通り、高山や寒冷地が主な生息域のはずだ。体から常に冷気を放っており、一部では「彼等が寒い地域に住んでいる訳ではなく、彼等が住んでいるからその地域の気候が寒冷化するのではないか」との見解もあるようだが、その辺りは未だはっきりとはしていないらしい。更に付け加えれば、仕事先である森は特に寒い地域でもない。どちらかといえば温暖な地域だ。
そこに、本来ならいるはずのない寒冷地の魔物。どうやら厄介な仕事を選んでしまったらしい。
「お前はまだギルドに来て日が浅い。実力は十分じゃが、流石にこの依頼を一人でというのは、ワシとしてもあまり推奨はしたくないんじゃ。お前からすれば腹立たしい事ではあろうが…」
「いえ、マスターの気持ちは解ります。無謀に挑んで死んでしまっては意味がないんですから。僕じゃまだ経験も実力も不足していますし、今回は別の仕事を……」
探しますね、と。
申し訳なさそうな顔をするマカロフに微笑んで言いかけた、そのアランの背後から声がした。
「マスター?何変な顔してるのよ、何かあった訳?」
ぴくり、と肩が震える。気付かれない程度の小さなそれを、それでも必死に押し殺して、そっと後ろを振り返る。青い瞳と視線がかち合い、顔が強張りそうになった。
長い青い髪、青い瞳。あの一件があってから帽子を被らなくなって、はっきりと見えるようになった可愛らしくも凛とした顔。出会った当初より柔らかな雰囲気を纏うようになった、けれどやっぱり棘のあるその人。
「……おはようございます、ティアさん」
絞り出したような声での挨拶に、彼女はちらりと目だけをやった。
(ああもうどうして…!)
依頼先まで行く為に乗り込んだ列車の中。向かい合う形で窓際に座ったアランは、もう何度目になるか解らない溜め息を必死に堪えていた。沈黙は苦にならず、苦どころか心地よいとさえ思えるのが常のはずなのに、今のこの沈黙が刺さるように痛い。というか重い。
(いや、解るけど。僕一人じゃ荷が重いのは解ってるし、そこにS級のティアさんが来たら「じゃあ一緒に行って来い」になるのは解るけど!内容的に早期解決が望ましいし、マスターの判断は当然のものだとは解ってますけど……けどさあ…)
攻撃特化の魔導士、ギルド最強の女問題児。漁ればあちこちで付いた二つ名が
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