巻ノ九十六 雑賀孫市その十一
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「存分に」
「そうしたことも出来るな」
「耳を澄ませば」
「そうか、ではな」
「草木にはですな」
「当てぬ様にしよう」
「それでは」
「忘れておったわ」
雑賀はこう言った。
「それのことは」
「草木のことは」
「どうもな」
「そうでしたか」
「わしには御主達までには聞こえぬからな」
草木や石の声はというのだ。
「だからな」
「そうだったのですか」
「そうした術が出来るとな」
「それも使い」
「今以上に戦うとよい」
「修行もですな」
「していくことじゃ」
是非にというのだ。
「これからもな」
「では」
「その様にな、それとじゃが」
「それと、とは」
「うむ、貴殿達の絆に感じ入った」
雑賀は穴山達にこのことも言った。
「主従であるが友人同士でもあり義兄弟でもありじゃな」
「はい、そして」
「死ぬ時と場所まで共にとはな」
「その絆がですか」
「感じ入ったわ、そこまで思うならな」
まさにというのだ。
「是非共じゃ」
「その様にですか」
「せよ、確かに激しく辛い道じゃが」
「それでもですな」
「最後の最後までな」
雑賀の言葉は温かいものだった。
「貫くことじゃ」
「歩めと」
「そう願う」
「ではな、修行を続けようぞ」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
雑賀は穴山に己の術を授けていった、穴山の鉄砲を撃つ速さも短筒のそれも雑賀と全く変わらなくなっていた。
そしてだ、炮烙もだった。
「うむ、炮烙もな」
「これまでよりですな」
「火を点けて放つのがな」
「速くなっていますな」
「うむ」
その通りとだ、実際に雑賀が投げたそれを見て答えた。
「よいことじゃ、炮烙は使える」
「戦の場において」
「そうじゃ、大きな音が立つ」
爆発のそれである。
「それにより多くの兵が驚く」
「かつて蒙古の軍勢が使っていましたな」
「あれは鳴るだけであったが」
「今の炮烙はぶつけることも出来ますな」
「それがまた強い」
「だからですな」
「よりじゃ」
まさにというのだ。
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