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真田十勇士
巻ノ九十六 雑賀孫市その九

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「あまりにもな」
「だからですか」
「戦ってそうしてな」
「生きよと」
「生きてそうしてな」
「そのうえで、ですか」
「そうじゃ、思いを果たすのじゃ」
「そしてその為にも」
「わしは穴山殿に術を授ける」
 ここでまた穴山を見て言った。
「必ずな」
「そしてその術で」
「生きて欲しい」
「必ず」
「そうじゃ、何があっても氏んではならぬ」
 雑賀は幸村達に心から言った。
「わしは死ぬ術を授けるつもりはない」
「生きる為のですか」
「そうした術じゃ」
 それになるというのだ。
「金の術はな」
「それでは」
 穴山もだ、雑賀に応えた。
「そうさせて頂きます」
「いいな」
「はい、雑賀殿の術を全て身に着けます」
「そうしてもらうぞ」
「そして殿と共に戦い」
「生きるな」
「十一人全てが」
 こう雑賀に約束したのだった。
「そうします」
「一人も欠けることなくな」
「何があろうとも」
「その意気じゃ、死ぬ術はわしは知らぬ」
 雑賀のその言葉は偽りはなかった、目にそれがはっきりと出ていた。
「生きる術じゃ」
「そしてその術を全て」
「教えるからな」
 こう言うのだった、そしてだった。
 実際に雑賀は穴山に術を教えていったが死ぬ様な術は教えない、それで駆けつつこうも言ったのだった。
「よいか、己の身体に火薬を置いてじゃ」
「そうしてですな」
「自爆する様なことはな」
「それはですな」
「術ではない」
 これまでになく厳しい言葉だった。
「断じてな」
「自爆はですか」
「松永殿もされておったな」
「茶器に火薬を詰めてですな」
「それに火を点けて爆発させて自害されたが」
 平蜘蛛という天下の名器にそうした、彼が終生大事にしていたその茶器を道連れにしてそうなったのである。
「ああしたことはな」
「断じてせぬこと」
「そうじゃ、爆発させてもじゃ」
「自身はですな」
「巻き込むな」
 こう言うのだった。
「よいな」
「死ぬからですな」
「火薬は己が死ぬ為にあるのではない」
「敵を倒す為ですな」
「それ以外には使うではない」
「何としても生きよ」
「その為じゃ」
 それ故にというのだ。
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