暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十四話 肉を斬らせる
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
出すのは危険だ。となれば先手は取れない、面白くは無いが相手の作り出す状況を利用するしかない。

「しかし、良いのか。貴族達が敗れれば帝国の劣勢は誰が見ても明らかになるだろう。フェザーンは帝国から距離を置くかもしれんが」
ケスラーの言葉にクレメンツが頷いている。

『今帝国が何よりも優先しなければならないのは改革を実施する事でしょう。それなしでは帝国は安定しない、そのためには邪魔になるものを排除しなければなりません。それを優先すべきです』
「……」
『それにフェザーンは交易国家です。反乱軍に付こうと交易そのものが止まることは無い』

フェザーンを失っても邪魔者を排除するか……。肉を斬らせて骨を断つという言葉が有るがこの場合ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯はフェザーンが肉だと判断したという事か……。非情、冷徹、そんな言葉が頭をよぎった。二人とも腹を据えてかかっている、

考えている事は理解できる、その狙いもだ。現状ではそれが最善の策だろう。問題が有るとすれば主導権を持てない事だ。主導権はヴァレンシュタインが持っている。それが帝国に何をもたらすか、それだけが不安だ……。



宇宙暦 795年 8月 16日  第一特設艦隊旗艦 ハトホル  ワルター・フォン・シェーンコップ



第一特設艦隊はリオ・ヴェルデ、ロフォーテン、バーミリオン星域を通過してランテマリオ星域を目指している。予定では二十三日にはランテマリオ星域に到着するだろう。残り一週間の日程だ。到着期限は二十五日だから二日程余裕が有る。十分間に合うだろう。

旗艦ハトホルの艦橋には落ち着いた雰囲気が漂っている。期限前に到着できるという事も有るのだろうが、最近では哨戒部隊がきちんと任務を果たすことが出来ているのが大きいだろう。当然ではあるが哨戒部隊が機能してからは奇襲を受けていない。ようやく第一特設艦隊は艦隊として機能しつつある。チュン参謀長を始め幕僚の多くがそう考えている。

「参謀長、各哨戒グループの位置を確認しました、特に問題は有りません」
「うむ、御苦労」
チュン参謀長がラップ少佐の報告に頷いている。周囲も問題なしの報告を当然として受け取っている。四時間おきに少佐は哨戒グループの位置を確認しているが訓練当初と違い問題有りの報告が上がることは無い。今でこそ皆平然としているが以前は問題ないと分かると露骨にほっとした表情を見せたものだ。

司令部は少なくとも通常の艦隊行動については問題ないだろうと考えている。次の課題は戦闘訓練と見ているようだ、俺もその点については同感だ。果たして分艦隊司令官達は司令部の命令通りに動けるか、自らの判断で戦局を優勢に運べるか、そして司令部は適切な命令を下せるか……。

ヴァレンシュタイン提督は指揮官席に静かに座って
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ