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雲は遠くて
128章  I LIKE ROLLING STONES (わたしは転がる石が好き)
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128章  I LIKE ROLLING STONES (わたしは(ころ)がる石が好き)

 7月15日の日曜日。真夏のような、晴れわたる上空で、気温も34度ほどだ。

 午後1時を過ぎたころ。
川口信也は、下北沢駅南口から歩いて3分、
世界最高レベルの、レコーディング・スタジオ・レオのミーティング・ロビーのドアを開けた。

 信也の彼女の大沢詩織たちのロックバンド、グレイス・ガールズが、
3枚目となるサード・アルバムのレコーディングをしているところだ。

 グレイス・ガールズは、ファンにも恵まれて、人気もあった。
しかし、メンバー全員、他に主となる仕事があるという、
音楽活動であるので、アルバム作りのペースも、ゆっくりとしたペースだ。

 2013年10月13日に、デヴュー・アルバム、 『Runaway girl(逃亡する少女)』
セカンド・アルバムは、2015年5月の『恋のシチュエーション(Situation of love)』
そして、サード・アルバムは、 『 I like rolling stones (わたしは転がる石が好き)』だ。

「しんちゃーん、こんにちは!」

 そう言いながら、テーブルでくつろいでいたメンバーの、
清原美樹や大沢詩織、菊山香織、平沢奈美、水島麻衣の5人は、
みんな笑顔で立ち上がって、信也を(むか)えた。

「みなさん、こんにちは。レコーディングも順調に、最後の1曲の、
『 I like rolling stones 』となったと聞いて、
おれも聴きに来ましたよ。みなさんのレコーディングの現場に立ち会えて、
とても光栄に思っています」

「今回、わたしたちの、サードアルバムが完成できますのも、
しんちゃんたちのご協力があったからだと思います。
なんといっても、アルバムのタイトルにもさせていただいた、
『 I like rolling stones 』は、しんちゃんが(つく)ってくださったのですから!
ありがとうございます!しんちゃん!」

 清原美樹は、笑顔でそう言って、頭を()げた。

 ほかのメンバーのみんなも、「ありがとうございます!しんちゃん!」
と満面の笑顔で、そう言って、頭を下げた。

・・・美樹ちゃんやほかのみんなもだけど、このバンドって、
どうしてこうも、美しい顔かたちとスタイルの女性ばかりが(そろ)ったんだろうか?
グレイスっていう言葉が意味している、
上品とか、優美とか、神の恵みとかが、ぴったりくる女性たちだよな。
ビジネス的には、もっともっと売り出せば、いくらでも稼げるんだろうけど、
それはしないという、経営方針の、
われらの、モリカワとモリカワミュージックか、それでいいんだろうけど・・・


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