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彼願白書
リレイションシップ
スラッシュエンド
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きっかけでしたが。」

そこまでわかってるならいいか、と龍驤は天龍に目を向ける。

「ほな、天龍。さくっとやって帰ろか。」

「だってよ、木曾。任せた。」

「俺に振るなよ。お前も行くんだよ。」

目に見えて面倒だと言わんばかりの態度の天龍を木曾が引っ張る。

「なんだよ。ガワが取れた瞬間に、大したことなくなったし、木曾に丸投げしようと思ったのに。」

「投げるな。賭けだ。飛び掛かられたほうが斬って、仕留めたほうが勝ち、ってことでどうだ?」

「賭け分は?」

「次の外での晩飯。」

「乗った。」

軽口を叩きながら、天龍と木曾は海面に四つん這いの状態で喉を鳴らす化け物のほうに向かって歩く。
これは確かに知性を感じない。

「天龍さん!」

「あー、いらんいらん。帰り支度しとけ。」

吹雪と浜風が援護に構えるのを、天龍が手を軽く振って制する。
そこに少しだけ、更に体勢を低くした化け物が飛び掛かったのは、天龍のほうだった。
いや、厳密に言えば天龍のいたところに、というべきか。
飛び掛かった化け物を打ち上げるように、波を切ったような怒濤が下を駈け、化け物は海面に落ちる。

「あーあ、あっちに行ってりゃまだ数刻は長生きしただろうに。」

その波涛の先端で、天龍は持っていた刀をゆっくり鞘に納めていく。

化け物は振り向きもしない天龍のほうに向きを変え、もう一度飛び掛かろうとする。

「ま、往生してくれ。」

天龍の刀が鞘に納まる音が鳴る。
水が噴き出すような音がする。
化け物が踏み出そうとした足が、伸ばそうとした腕が、捻ろうとした胴体が、そして振り向こうとした首が、まるでもとからバラバラだったかのように離れて崩れ落ちる。

「お見事。」

「は、何が見事なもんかよ。帰るぞ。」

バラバラとなった化け物の身体が全て沈んだあと、爆発と光を伴った水柱が上がる。
それだけを横目にちらりと見た天龍は、木曾のほうを向く。

「木曾、帰ったら晩飯の賭け、忘れんなよ。」
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