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嗚呼、これは。

そこから先の感想を春風は紡げなかった。
次に来る下の句が、すんなりとわかってしまったから。

その次に来る下の句は

『死ぬ。』

覚悟はない。
許容もない。
理解はしてしまった。

姉より先に、この結末をわかっていた。
止めたところで、見つかった時点で詰みだったのだ。
彼女は悲しい将棋指し。
四十九手先まで配されたあらゆる死がどれも全て避けるということが出来ないという王手であると理解してしまった。

敵は頬を上げ、指先を染める血をもてあそびながら、一歩ずつ歩いて近付く。
長く、黒い髪。
紺碧と漆黒の混じる長い丈のドレス。
背中から、いつの間にか出された不釣り合いな剛腕と指代わりにか、その先にはめこまれた砲塔。
“ネームレベル”『ハーミテス』は、この深海淒艦のことであったと、後に知る。
彼女達の仇はすなわち、この目の前の黒い乙女。
駆逐艦娘二人でどうこう出来る相手では、そもそもない。

状況は完全に詰みだった。
神風の脇腹の傷は相応に深いらしく、それでも吹っ飛ばされただけ、手加減されていたのが春風にもよくわかる。
手刀で脇腹に切傷を入れられるような鋭さなら、そもそも、吹っ飛ばす必要がない。
もっと深く斬り込んでしまえば、そのまま致命傷となったはずなのだ。
つまり、まだこの深海淒艦は遊んでいる。

そう、春風は判断した。
そして、どのみち詰みである以上はみっともないほどの足掻きの果ての『ちょっとした誤算』のみが、唯一の可能性であることを信じるくらいには、春風は往生際が悪かった。

「止まりなさい。」

姉を庇いながら砲を向けた春風に、彼女は顔を歪め、くつくつと笑い出す。
何が面白いのか。
駆逐艦娘程度が、必死に威嚇しているこの状況が、そんなに面白いのか。
春風の奥歯がぎり、と鳴る。
これはただの悪足掻きにしか見えない。
それは春風にもわかっている。
だが、足掻くにもそれなりに賭けるに値するものがあった。
例えば、上空から聞こえる音が大きくなっていくヘリのローター音。
もしかしたら、それが何かを変えてくれるかもしれない。
変わらなければ?

まぁ、それは死だろう。

だが、少なくとも何かを起こせるのでは?

それだけが春風の賭け。

だからこそ、みっともない足掻きのような、そんな威嚇を選んだ。

そしてヘリのローター音が真上を通過した今、春風の足掻きは結実した。

「見つけたわよ!“ネームレベル”『ハーミテス』!」

声を聞いた春風は最初、周囲を見回した。

人を初め、地上を二次元に生きている生物は、声がすると本能的に周囲を平面で探してしまうものだという。
どうしても、上からというものだと判断するには、訓練を積
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