リレイションシップ
オープニング
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。
それでも、それでも。
「ぐっ!」
「吹雪!」
爆発から飛び出して、吹雪の眼前にまで跳び跳ね駆けた敵は、熊手のように指を広げた手の平を袈裟斬りのように振り下ろす。
それを左腕で防ぐも、吹雪はそのまま崩されて吹き飛ばされる。
それを止めようとして、浜風が両手の砲を構えて狙いをつけるよりも速く、敵は吹き飛ばした吹雪に向かって駆ける。
吹き飛ばされて宙に跳ね浮いている吹雪に、それを止める術はない。
まずは一人、と確信して疾走する敵の顔が歪む。
そして、吹雪に向かっていたその軌道が突き飛ばされたかのように横に逸れる。
「確かに、かなり不味い存在です。」
敵が体勢を崩した状態から受け身を取り、睨んだ先には、桃の髪をしたブレザー服姿の少女。
ピンと伸ばした腕の先、指先をぴたりと揃えた左の掌底を下げ、その手の平を見ながら指先を動かして開いて閉じてを繰り返す。
「今ので抜けませんでしたか……残念ですね。」
駆逐艦、不知火はあまり口ほどに残念そうにせずに、砲ではなく、平手を構える。
不知火は今の吹雪のやりとりで、砲戦という選択肢を既に捨てている。
吹雪が今回、普段なら用いない『とっておき』の砲弾を持ち込んでいるのを不知火は知っている。
それですら、こいつには明確なダメージになっていない。
不知火の持つポシェットタイプの連装砲も、装填しているのが通常弾である以上は、これの装甲は抜けないだろう。
つまり、不知火の砲戦能力は実質ゼロと考えていい。
こういう事態そのものは不知火にも割と多く、普段ならばそもそも魚雷で仕留めるのだが、既に全魚雷を初撃で撃ち尽くし、デッドウェイトとなった発射管も投げ捨てている。
そして、この程度で打つ手無しとなることを、不知火は当然ながら良しとしてはしない。
故に、片手間ながらも徒手空拳での戦い方も研鑽している。
「まぁ、それはいいでしょう。」
不知火を睨み付けた敵は拳を構え直す。
その構えは、構えというにはあまりにも理性のない、獣染みたもの。
そして、相対した不知火はニヤリと口元を上げる。
「来なさいよ。沈めてやる。」
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