リレイションシップ
スターティング、ポジション
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隊、旗艦……神風!」
砲を握り直し、艤装を背負い直し、たん、と足音ひとつ。
飛沫上がり、火花駆ける、そこへと彼女は走る。
「さぁ、抜錨よ!」
「で、私を居残りにした理由は?」
「引っ掛かる点があった。確信はなかった。今もあるとは言いがたい。だが、無視をする訳にはいかないと思う。そんな、予感があった。」
「まるで、予感が当たった顔ね。」
壬生森と叢雲は『おおどしま』の甲板で、次のヘリを飛ばす準備が終わるのを待っている。
叢雲は壬生森の『引っ掛かり』に付き合って、一人だけ残ることに同意した。
そして、引っ掛かりから見つけ出した、あることが叢雲の出撃を決めたのだ。
「ネームレベル一体のジャミングなら本来はものともしない現代の無線が、こうして機能停止した。そして、ハーミテスという名前の意味するところ。米軍があまりにもアッサリと切ってきた熱核攻撃という切り札。全部が繋がった。繋がって、しまった。」
「受け入れがたい答えだったの?」
「あぁ、間違いであることを今は願ってやまないよ。」
ふらつきながらもなんとか着艦したヘリに、速やかに燃料補給が始まる。
「叢雲、今回は私も行くぞ。」
「珍しいわね。今回はそんなに不安なの?」
「……タイムラグを減らしたいだけだ。」
壬生森は珍しく、懐の内ポケットから細い煙草を出して、火を着ける。
「煙草まで出して。いつ以来かしら?そんなに強張ってるアンタを見るの。」
「少なくとも、前に開けてたのが湿気てて不味いどころか火が着かなくて、仕方なく新しい箱を開けるくらいには。」
「……何年前のよ、その湿気た煙草……」
壬生森の言葉に、叢雲は呆れ果てる。
本当はどれだけ不安なのだろうか、相変わらず推し量れない。
彼への理解が、未だに追い付かない。
叢雲は、そんな自分にこそ呆れ果てるばかりだ。
叢雲は未だに、壬生森の本心に手が届いていない。
その事実が心に刺さって抜けない楔として、叢雲をもう十年単位で苛んでいる。
「ヘリの用意が出来たようだ。そろそろ向かうとしよう。」
「そうね。決着をつけに行きましょう。」
ひとまずは、獲物を狩ろう。
それもなしに、嘆くような暇はない。
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