暁 〜小説投稿サイト〜
彼願白書
リレイションシップ
キャンユーキープアシークレット?
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
を見て、『作戦中に孤立無援ながらも最期まで奮戦した勇敢な泊地』としてトラックを解放する。市ヶ谷の書いているカバーストーリーはそうだったハズだ。」

壬生森がアイマスクにしていたレポートはまさにその内容が書かれていた。
壬生森にとっては別段、興味もない話だったので中身だけさっと読んで書類棚の迷宮に埋めてサヨナラする予定だった。

「提督の耳に、市ヶ谷のカバーストーリーしか入ってないとは……呆れますわ。」

「“元”提督だよ。それに、誰だって自分から進んでメンツを潰したくないものだ。今回の件がこの程度の裏で済まないことはわかっている。そして、私が探りを入れても余計なちょっかいにしかなるまい。」

壬生森の言葉に、熊野がむすりとしている。
まるで、壬生森の態度が正しくないと言わんとしている。

「私は今や、ただの内務省の小役人だ。作戦行動中の海軍とは本来は無縁なハズだよ。それ自体が違法なスキャンダルならともかく、作戦行動中の軍機にまではタッチする訳にはいかんだろう?」

「……貴方が言うことは尤もですわ。ですが、私が持ってきたものは、貴方の知る更にその裏側。そして、貴方ならこれを見過ごすことはない、四の五の言っていられない。そうわかっていてこれを見せる……罪深い私を許してはくれませんか?」

熊野が差し出した、赤色の表紙で閉じられた書類が一綴り。

「……無理をしたな、熊野。」

「このくらいのことがなければ、貴方を連れ戻そうとは考えませんわ。それほどまでに、事態は逼迫してますの。」

「とりあえず見てやる。見たことにするかは、見てから考えさせてもらう。」

「構いませんわ。そして……」

壬生森は叢雲から使い捨てのビニール手袋を貰い、それを填めた上で、その軍機に手を掛ける。

「やはり貴方は怒らないのですね。」

「なぜ、今の時点で怒る必要が?君は必要だと思った行動をした。それが問題かどうかは、これから判じるのだよ?」

「……そうでしたわね。貴方は、そういう人でしたわ。」

熊野はどこか落胆したような、安堵したような、落ち着いた声で答える。
熊野はきっと、相応の覚悟をしてここに来た。
壬生森はそのことをわかった上で、その赤い書類を見ることにした。
その後ろにいる叢雲は、どこかつまらなさそうな顔で飴玉をかじっていた。

この、お人好しめ。

口から出そうになった、その言葉を擂り潰すように飴玉をかじる叢雲は、しばらくは機嫌の喫水線が斜めに傾いたままだった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ