リレイションシップ
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硝子天板のテーブルの上に置かれた固定電話がけたたましく電子音を鳴らすのを、眠れるこの部屋の主、壬生森は速やかに受話器を手に取ることで黙らせる。
その拍子に彼がアイマスク代わりにしていたレポートがバサリと床に落ちるが、彼はそのまま電話の呼び出しに出ることを優先した。
「分析室、壬生森。」
『熊野ですわ。今、永田町まで来てますの。お伺いしても?』
「面倒事か?」
『えぇ、それも飛びきりの。』
まったく、と悪態を吐きながら彼は受話器を置く。
熊野が出向いてきた、ということは海の上での話である。
ひとまず、落とした拍子にクリップが外れて床にぶちまけられたレポートをそそくさと拾いながら、彼は肩を落とす。
飛びきりの面倒事、という電話の向こうの女性の言は、彼を憂鬱にさせるには充分な言葉だった。
「三笠からの呼び出し?」
実際には大広間とも言えるハズの、この部屋の敷地面積の大部分を占めている書類棚の壁で出来た迷路から、白い髪の少女が顔を出す。
彼女はこの部屋の主の秘書として、長らく彼に付き添ってきた物好きな元“艦娘”。
腐れ縁というのも長いもので、彼女の実年齢が、肉体的な年齢を倍ほど上回るくらいには長い付き合いになるか。
テクノとオカルトのカオス、リアルとファンタジーの分水嶺の上で両手を広げて踊る、オリジナルの一人にして一隻。
駆逐艦娘、叢雲。
それが彼女だ。
「いや、熊野が今から来るそうだ。飛びきりの面倒事をお土産にな。」
彼女はそれを聞いて、あからさまに嫌そうな顔をする。
かつての同僚だろうに、そこまで嫌がらんでも、と思わないでもない。
「まったく、今度の面倒事はなんだろうね?」
「アンタがアイマスクにしていたそれ絡みの面倒事に20。」
「では、私はお前の前線復帰要請に賭ける。」
「この御時世に私みたいなロートルの復帰なんかないわよ、まったく。」
お互いに賭けた額は、お互いに今夜の晩餐に使われることになる。
お互いに当たっていて、お互いに当たっていない、そんな曖昧な結果が、来客の持ち込んだ「面倒事」だった。
「まずは……ごきげんよう。壮健なようで何よりです。」
「そっちも相変わらずのようだな、熊野。」
翡翠のような瞳に、頭の後ろ、うなじの上辺りで熟れた毬栗の針のような色を艶やかにした癖のない茶髪を束ねた、それに相応しく落ち着いた秋の山色のようなブレザーにスカート姿の落ち着いた瀟洒な女学生のような姿の、少女と淑女の間を行ったり来たりしているような年頃の、しかしながら妥協案で乙女というにはあまりにも見た年には不相応なほど落ち着き過ぎている。
そんな彼女が、内務省統合分析室……を冠した部屋の主の根城に現れたのは、電話から30
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