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彼願白書
元提督は本題を切り出す。
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金城が早霜の頭を撫でる。
家族、か。
思い当たるフシはある。
きっと、私はそれが出来なかったのだ。
上司と部下として、それ以上に踏み込めなかった。
だから、今も歪な関係でいるのだ。

「そんな相手に褒めてもらいたい……そう思うのは不自然でしょうか?少なくとも私は、提督に褒めて頂きたいと日々の業務に励んでいます。その結果が錬度であり、その終着点こそケッコンカッコカリと思っています。」

「成る程……ケッコンはあくまでも結果であり、目的ではないか……貴重な意見だ。どうも、ありがとう。」

艦娘自身から見た提督観、か。
ケッコンカッコカリの価値は艦娘も決めていくこと。
それは考えから、すっかり抜け落ちていたことかもしれない。
それに気付かされた壬生森は早霜に礼を言いたくなったのだ。


そのあと、壬生森は金城といろんな話をした。
ケッコン艦娘達の中で決めているらしいこと。
いろんな艦娘がいて、それぞれのこと。
悲しかったこと、苦しかったこと、笑い話、未来の話。
いろいろと話している間に朝が来て、帰る時間はすぐだった。



「朝か。長かったハズなのに、あっという間に夜が明けたな。」

朝になって、壬生森達が鎮守府を出て船に戻る最中。
少し、足元に力がちゃんと入らないが、まっすぐ歩けている。

「夜明け、か。懐かしいわね……白く染まった海も。」

「現場に、戻りたい?」

「アンタがいるところが、私の戦場よ。何十年、アンタの秘書艦やってると思ってるのよ。」

叢雲が珍しく、壬生森の腕に絡む。
いつ以来だろうか、と壬生森は振り返る。
相当に前だとは思ったが、すぐに思い当たらないくらい遠い前だった。

「叢雲。今更になって結婚しよう、って言ったらどうする?」

「ケッコンカッコカリは現役の提督と艦娘でしか出来ないわよ。」

壬生森の言葉に、叢雲は呆れたように答える。
壬生森はそんな叢雲に苦笑して誤魔化す。

「……そうだったな。」

朝焼けの中、壬生森達は自分の戦場へと戻る。
次はどこへ行こうか。
この二人は、艦娘のいるところに行く。
次はもしかしたら、貴方の鎮守府かもしれない。
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