暁 〜小説投稿サイト〜
彼願白書
元提督は引き続き、料理を覚える。
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
帰国後にしばらくしたら、唐突に隣の叢雲が気紛れで「あれ食べたい!」と言い出すのが目に見えている。
この秘書艦、普段は有能なのだが、飯には本当に、本当に煩い。
そういう時に出来るだけ安く済ませるために料理のレパートリーばかりが増えていくのはいいやら悪いやら。
味だけでは漬け込んだだろうタレの細かい中身がわからなかったのがあるが、再現しようにも、なかなかに手間がかかるだろうことは疑いようもない。
統合分析室主計の壬生森としては、簡易版も聞いておきたい。

「そういう事ならスパイスすりこむだけのお手軽バージョンもあるぜ。これよりは多少味が落ちるがな。」

食いながら見ていてくれ、と金城は壬生森の目の前で調理を始める。
鶏肉に刃を入れ、火の通りをよくしていくようだ。
そこに、塩、チリペッパー、 パプリカパウダー、クミンパウダー、おろしにんにくを順番に擦り込んでいく。最後にオリーブオイルをまぶすように擦り込んで、しばらく置いておく。

「さて、しばらく置いておくわけだが、この順番に擦り込まないとちゃんと味が付かないんだ。あとでメモ書きを渡しておくよ。」

「ふむ、助かる。さて、置いている間に、聞いてみたいのだが……なぜ、私を『蒼征』と気付いた?」

壬生森は気になった疑問を金城に聞いてみる。
彼が現役で提督を辞したのは、二十年は前のことだ。
艦娘も、ドクトリンも、当時とは違う。接点もない。

「俺が提督になる前の時代、本当に奴等が領海を縦横無尽に暴れていた頃に……何体かの『本当にヤバイ奴』を佐世保所属の『蒼征』が討ち取ったから、俺達に指導し、艦娘を用意するための時間稼ぎが出来ている……教官が口酸っぱく言っていたことさ。そして、その司令官の名前もな。」

「それで、か……なるほどな。」

「壬生森、なんて名前はそうはないしな。」

『蒼征』より『ニライカナイ』のほうが通りがいいと思っていたが、どうやら『蒼征』のほうが通り名としては通っていたらしい。

「さて、あとは焼くだけだ。」

フライパンを熱して、皮から焼いていく。
蓋をして、中身を確認しながら時おり引っくり返し、じっくりと焼いていく。
焼き上がったら、食べやすく切り揃えていくようだ。

「さぁ、出来たぞ。お手軽版のドライタイプだ。」

「では、さっそく。」

フォークで一切れ刺して、一口かじる。
なるほど、先程のが肉の旨味を出しているとするなら、こちらは歯応えだろうか。
それを酒で解すようにすると、驚くほど相性がいい。
これも旨いな。何より先程のより手軽で、これならオフィスのキッチンで作れそうだ。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ