提督はBARにいる外伝、ロッソ
元提督は料理を覚える。
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らそのまま静かに注ぐ。
「コモドールです。瓶の状態より『濃い』ものをベースにしているので、少しばかりアレンジしていますが。」
「悪くないわ。ちょっとだけイジワルしようと思ったけど、さすがにカウンターの内側にいるのは伊達じゃないわけね。」
そう言って、叢雲が頬笑む。
叢雲は最初、『甘口のもの』というオーダーを出した。そして具体的なオーダーで『コモドール』を頼んだ。
レシピはバーボン、クレーム・ド・カカオ、レモンジュースを1ずつにグレナデン・シロップを1振り。
しかしここで罠がある。
側にはワイルドターキーの樽が持ち込まれている。
サービス心からこれを使おうと思うだろう。
だが、ここが問題だ。
バーボンは普通、瓶詰め段階で加水処理が行われる。
ワイルドターキーはその加水処理での水が少ないほうなのだが、それでも樽の状態だと瓶のものより『濃い』のだ。
つまり、レシピ通りに作るとバーボンの力が勝ちすぎてしまう。
そこで早霜はワイルドターキーを冷やすついでに加水処理後に近い状態にしたのだ。
つまみが熱いモノという点を見てもなかなかのアドリブだ。
さらに甘口寄りに口当たりをよくするため、クレーム・ド・カカオもミルクチョコレートの風味が強いホワイトを選び、レモンジュースも冷やしてあるものを選んだ。
そして最後にグレナデン・シロップをシェークではなく、グラスに回している。
味の変化が楽しめるし、色合いも変化するため、見た目にも楽しいが、やってることはなかなか難しい。
なかなかの技巧派であるようで、叢雲も久しぶりに微笑んでいる。
どうやら叢雲も気に入ったらしい。
昔、頑張ってきた駆逐艦の新米をその頬笑みを見せながら褒めていたのを覚えている。
「お褒めに預かり、恐縮です。」
静かに一礼して、早霜は自分の分を手早く作る。
自分の分でもその仕草に手抜きや淀みはない。
よく出来た子だなぁ、と思っていると、金城からタンブラーに氷をキチッと詰めた状態でワイルドターキーを出してくる。
「なるほど、よく出来る子らしいね。」
「あぁ、優秀な助手さ。」
金城も鼻が高いようだ。
さて、まずは乾杯と行こう。
「では、乾杯!」
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