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彼願白書
提督はBARにいる外伝、ロッソ
元提督はドヤる。
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涯収入では逆立ちしても足りない値段から「オークションが始まった」のだ。
つまり、ハンマープライスはこれより遥かに上である。
ただ、これは買手と出品者が通じており、米国本土でしか売られてなかったフォアローゼスマリアージュを仕入れたというアピールのために行われた茶番であったとか。

さて、そんな訳でこの樽もそんな密輸品のひとつと金城が疑うのは無理もない。
だが、今回は真っ当に(機密費とかいろんなコネとかいろんな力業で)購入したものだ。胡散臭い紛い物の類ではない、本当のワイルドターキーだ。

そんなワイルドターキーの樽を見ながら、金城は少し考え込んでいる。

「アンタもしかして……『蒼征』の壬生森か?」

壬生森は驚いた。
既に提督時代よりも今の内務省勤めのほうがキャリアは提督時代に前後して、ン倍は長いくらい前のことな上に、『ニライカナイ』ではなくそっちの名前が出るとは。
何より驚いたのは、そっちの肩書きで呼ばれても嫌悪感のない自分に驚いた。
どうやらいつの間にか、『蒼征』を過去として受け入れていたらしい。
なんで酒樽を見てわかったのかは知らないが。

「その名前も既に懐かしいな。その通り、私が……その壬生森だ。」

「そんなすげぇ提督が俺みたいなチンピラ崩れに何の用だい?」

「私は既に提督の職は辞した身だ。それに、今の仕事の方が本職でね……しかし、チンピラ崩れとは卑下し過ぎではないかね?」

すげぇ提督、と来た。
いったいどんな噂が尾びれ背びれ胸びれ生やして泳ぎ回ったらそんなことになるのか、と壬生森は振り返る。
振り返るが、すげぇこと、というのはあまり覚えがない。
勝てる戦いを無理矢理勝って、負ける戦いはそそくさ退いていただけに過ぎないという結論に至る。
やっぱり、すげぇ提督というのには程遠い。

しかし、そんな強面で緊張されては本来の目的が達成できない。
だから叢雲、こっちを睨むな。私もここまでガチガチになるとは予定外だったのだ。
「どうすんのよ!めっちゃ警戒されてるじゃない!ご飯食べたいだけなのに!」みたいな目でこっちを睨むんじゃない!
あー、これは下手に誤魔化すより素直に白状したほうがよかろう。

壬生森はそこまで逡巡し、素直に白状することにする。

「……ここに来た理由?酒を飲みに来ただけだが?」

「……は?」

うわ、なに言ってんだコイツみたいな顔になった。
ちゃんと説明しないと胡散臭さしかない。

「だから、私達二人はこの店の噂を聞き付けてね。それで是非そのお手前を味わいたいと、横須賀からここまで来たのだよ。」

あ、助手雲くんが小さくピースしてる。
どうやら、助手雲くんは最初からわかっていたらしい。
偉いぞ、助手雲くん。君はたぶん、最高の助手だ。


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