Side Story
少女怪盗と仮面の神父 46
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ーシャルは頑として退かなかった。
二番目に強いクナートよりも近くで姉を護るんだと。
自分の力で、自分の足で、懸命に走り続けた。
姉には、妹が生きようとする姿を否定できない。
決して良い顔はしなかったが、うち捨てられた人形みたいに虚ろう瞳や、年不相応に幼い異常な言動を、誰よりも長く、近くで見てきたからこそ。
妹が見せつける強い意志を、拒み切れなかった。
表舞台で華やかに活躍する十三人の覆面義賊は。
こうして、知らぬ間に罪を重ねていった。
ハウィスに石を投げ、高らかに笑いながら、自らの手で首を掻き切った、虹彩異色症の少女が現れるまで。
「英雄気取りで、他人の人生を狂わせて、持て囃されて。あんた達は、さぞ気分が良いのでしょうね」
街の中に一輪咲いた、深紅の大花。
勢いに強弱をつけながら絶え間なく溢れる鮮血の泉の中心に転がり落ちた少女の顔は……笑っていた。
愕然と立ち尽くすブルーローズを見上げ、頬を伝う涙を赤で汚しながら。
嗤っていた。
自警団や兵士の慌ただしい足音や声を聴いて正気に戻ったクナート達が、ブルーローズの塒へと無理矢理引きずって帰った後も。
ハウィスはしばらくの間、硬直していたらしい。
仲間の声も聴かず、肩を揺さぶってもまったく応じない。
瞬きすらしないハウィスに変化をもたらしたのは。
亡き少女に対する、マーシャルの怒声だった。
「他人に寄生するしか能が無いクセに、姉さんの邪魔をして……っ??」
少女の身形は、明らかに一般民の普段着とは趣が異なっていた。
金持ちの異性にすり寄り、一夜の夢を売って対価を得ようとする。
そんな意図が含まれた薄衣装。
マーシャルの叫びは、少女と自分に重なるものを見つけてしまった故の、悲痛な怒りだ。
どうして、抗おうとしなかった?
どうして、他の道を探さなかった??
笑いながら自死できるほどの絶望を抱えるくらいなら、どうしてっ??
マーシャルのそんな言外の悲しみを理解したからこそ。
ハウィスは気付く。
狂わせた。
つまり、少女のあの出で立ちは、本来あるべき姿ではない。
自らの力ではどうにもならなかった道を進んだ結果。
そうさせたのがブルーローズの行為、貴族の所有品強奪だとするなら。
自殺した少女の正体は……
罪悪の歯車が?み合った瞬間、今度はハウィスの心が壊れた。
生きようとしている。
立場は違えど、誰もがそれぞれの方法で必死に生きようとしていた。
誰かの邪魔をしたのは、ハウィスも同じ。
ハウィスの行動が、少女を死に追いやった。
ハウィスが。
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