Side Story
少女怪盗と仮面の神父 46
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人が揃った孤児の一団は、姉妹の目の色を冠した劇場型怪盗集団・ブルーローズを本格的に始動させる。
が。最初の問題は集団内部で発生した。
マーシャルが、ハウィスの次に強いクナートと密通したのだ。
しかも、よくよく聴けばクナートだけではない。ハウィスと他一人を除く仲間全員と肉体関係を持っていた。
いずれもマーシャルが自分から持ち掛けた話だと聴かされ、ハウィスはかつてないほど激怒した。そんな筈はない、あの子にそんな意識は残っていないのだから、と。
悪びれる様子も無いクナート達に問答無用で斬り掛かるハウィスを止めたのは、いつの間にか年相応に近く少女らしい言動を取り戻していたマーシャル本人だった。
これ以上姉さんに頼って生きたくない。だから、私をブルーローズの仲間に入れて。私を荷物扱いしないで。私はもう、姉さんとだって肩を並べて戦える。
実際、マーシャルはその場でハウィスと剣を交えて勝利した。ハウィスの虚を衝いたからでもあるが、クナート達が剣の扱いを密かに仕込み直していた事も大きい。
ハウィスがどれだけ怒り、どれだけ泣き、どれだけ説得を試みても、マーシャルは絶対に退かなかった。二番目に強いクナートよりも近くで姉を護るんだと、自分の足で懸命に走り続けた。
姉には、妹が生きようとする姿を否定できない。決して良い顔はしなかったが、人形みたいに虚ろう瞳や、年不相応に幼い異常な言動を誰よりも長く近くで見てきたからこそ、妹が見せつける強い意志を拒み切れなかった。
表舞台で華やかに活躍する十三人の覆面義賊は、こうして知らぬ間に罪を重ねていく。
ハウィスに石を投げ、高らかに笑い、自分の手で首を掻き斬った、虹彩異色症の少女が現れるまで。
「英雄気取りで他人の人生を狂わせて、持て囃されて。あんた達は、さぞ気分が良いでしょうね」
街の中に一輪咲いた深紅の大花。絶え間無く溢れる鮮血の泉の中心で転がる少女の顔は、笑っていた。ただただ愕然と立ち尽くすブルーローズを見上げ、頬を伝う涙を赤で汚しながら。嗤っていた。
自警団の慌しい足音で正気に戻ったクナート達が塒へ無理矢理引き摺って帰った後も、ハウィスは暫くの間硬直していたらしい。
仲間の声も聴かず、肩を揺さぶっても全く応じない。瞬きすらしないハウィスに変化を齎したのは、亡き少女に対するマーシャルの怒声だった。
「他人に寄生するしか能が無いクセに、姉さんの邪魔をして!!」
少女の身形は、明らかに一般民の普段着とは趣が異なっていた。異性に擦り寄り、一時の夢を売って対価を得ようとする意図が含まれた薄衣装。
マーシャルの叫びは、少女と自分に重なるものを見付けてしまったからこその悲痛な怒りだ。
どうして、抗おうとしなかった?
どうして、他の道を
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