巻ノ九十六 雑賀孫市その四
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「そなたに教えようぞ」
「その秘術も」
「無論じゃ、わしが知っている全てな」
「教えて頂きますか」
「これよりな、そして」
「そして?」
「それは今からはじめる」
早速だった。
「よいな」
「わかり申した」
「それではそれがしも」
幸村も雑賀に申し出た。
「付き合わせて頂きます」
「真田殿もか」
「そうして宜しいでしょうか」
「無論、では真田殿もじゃ」
「はい」
「わしと共に修行をしてな」
そうしてとだ、幸村にも言った。
「強くなってもらう」
「それでは」
こうしてだった、穴山は雑賀から鉄砲そして火薬を使った術の全てを教えてもらうことになった。熊野の深い山の中でだ。
彼等は駆け巡り鉄砲を撃った、ここでだった。
雑賀は鉄砲を撃ちつつだ、穴山に言った。
「雨や雪でもじゃ」
「鉄砲はですな」
「うむ、撃つことじゃ」
「それが出来る様にですな」
「常に火蓋を濡らしてはならぬ」
こう言うのだった。
「そして鉄砲自体もな」
「濡らさぬ」
「いざという時までは出さぬ様にしてな」
「そして出せば」
「素早く撃つことじゃ」
雑賀は並の者の倍以上の速さで鉄砲を次から次に撃っていた、それだけでなく短筒も出して的を撃っていた。
狙いは百発百中だった、山の木々の中を激しく駆け巡りつつ。
「こうしてな」
「駆けつつも」
「むしろ駆けてもな」
その中でもというのだ。
「常に狙ったものを撃たぬ様では」
「いけませぬな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「それはわかっていよう」
「拙者も忍です」
これが穴山の返事だった。
「そして忍の戦はです」
「何時でもじゃな」
「はい、駆けるものですから」
「そうしつつじゃ」
「この様にですな」
穴山も駆けつつ鉄砲を仕込み放って言う、的を確実に撃っていた。
「すべきですな」
「見事、しかしな」
「今のではですな」
「少し仕込むのが遅い」
弾、それをというのだ。
「だからな」
「より、ですな」
「速くじゃ、そしてな」
雑賀はさらに言った。
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