ホープレス・チャント-Love your enemies-
開演
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いないかのように、ルクスから許可を貰って携帯の音量を下げつつスピーカーのモードに変えていく。
『ちっ、違うわよ! 別に嬉しいとかじゃなくて、ルクスにも教えてあげよってだけで!』
「はいはい、そうよね。分かる分かる」
『ッ〜――!』
「ええと、グウェン」
何が違うのやら、グウェンが何かと言い訳を始めていくが、リズはそれを適当に、かつ面白そうに流していて。とはいえ流石にいたたまれなくなったのか、困ったような笑みを浮かべながらルクスが携帯に語りかけると、ずっとリズに噛みついていたグウェンがピタリと口を閉じた。
「クナイ、なくなってましたよね? あの場所に行く前に、リズさんたちの店に寄って行きましょうか」
『……いつもの、用意しときなさいよ』
「だってさ」
「あいよ」
リズが作っていないということもあって、《リズベット武具店》でも売れ行きもさっぱりな商品のクナイだったが、お得意様がいるということはありがたいことだ。数少ないクナイ使いの同士として、内心に喜びを圧し殺しながら応答しながら、心中で作りおきがあったか確認しておくと。先程までから騒がしかった携帯の向こうのグウェンから、何やら躊躇するような雰囲気が感じられて。
『……そういえば、あんたたち知ってる? 例の……《デジタルドラッグ》のこと』
「……穏やかな名前じゃないな」
念のためにリズとルクスにも問いかけてみるも、二人とも聞いたことがないとばかりに首を振っていて。字面からして分かりきったことではあるが、あまり愉快な話ではないようで、携帯の向こうのグウェンからも多少のうなり声が聞こえてくる。
『最近、他のゲームで出回ってるらしいのよ。反応速度とかを上げて幸せな感じにして、中毒症状があるってのがね』
「へぇ……まさにドラッグね」
「……グウェン。またそういう情報が来る付き合いを?」
『へっ!?』
そんなグウェンからもたらされた情報に、俺もリズも嫌な予感を感じざるを得なかったが、ルクスだけは少しだけ反応が違っていて。いつもほんわかな雰囲気を漂わせているルクスには珍しく、どこか怒りの感情を覗かせていて、グウェンも予想外の返答に上ずった声をあげた。
「どうなんですか?」
『たまたま! たまたま、その、昔とった杵柄? って言うの? 《ALO》にも出回るかな、って警告してあげただけなんだから! じゃ、じゃあクナイ準備しときなさいよ!』
最後まで早口言葉でまくし立てながら、グウェンは一方的に電話を切った。こちらも恐る恐るルクスの方を見てみれば、どうしてかたなびくウェーブの入った髪が邪魔で、彼女のうつむいた表情を伺うことが出来ずにいて。その偶然ながらもホラーめいた演出に、内心では戦々恐々としながら
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