ホープレス・チャント-Love your enemies-
開演
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ウキさんは、どうなんですか?」
「んー……あたしはさ、ずっと自分の店を出すのが夢だったんだけど……最近、《ALO》の武具店で充実してる感じなのよねぇ」
「これだけずっと切り盛りしてくればな」
《SAO》で露店商をしていた時から数えれば、リズが客商売をしているのはもう三年ほど前からになる。場所は変わり、世界は変わり、プレイヤーは変わり――手伝っている程度の身分からしても、これは立派な客商売と言えると自負している。もちろん現実の店とは勝手が違うことは分かっているが、リズにしてはこの武具店を切り盛りする毎日とは、すでに夢が叶っているも同然だった。
「だから、あたしは考え中。今の時代、現実で店を出すのが難しいってのも分かるしね……」
「まあ、リズっちにはショウキくんのところに永久就職! って選択肢もあるもんね〜」
『ブフッ』
「ご主人様〜お飲み物、お待たせしました」
二人してお冷やを口に運んでいたところ、近づいてきていた亜麻色の店員から放たれた地雷に、リズと揃ってむせかえっていたが。その元凶はなにくわぬ顔をして、俺たちの机の上にコーヒーを運び込んできていた。
「……ねぇレイン。お客様を噴き出させる店員ってどう思う?」
「えーっと……店長には秘密にしておいて欲しいかなー、なんて。ほら、これも持ってきたから」
そうして恨みがましい視線で見つめてくるリズをかわしながら、もはや見慣れてしまったメイド服姿のレインが、コーヒー以外にある注文書を机に置いた。紙には何やら模様が書いてあるようで、その模様を《オーグマー》で読み取ると、ミニゲームが始まるという寸法だ。クリア特典はケーキか何かで、もう随分と《オーグマー》もあって当たり前のものと化していた。
「そういうレインは……って、聞くまでもないよな」
「うん。レインちゃんはいつでも、夢に向かって邁進中ですぞ?」
「すごいですよね……」
「え、えと、いざそう言われると照れるんですけど……」
学生として過ごしている俺たちと違いこうしてアルバイトをしつつ、もう仕事もある立派なアイドルの卵のレインに、もはや夢の話など愚問であって。そんな風におどけていたレインだったが、ルクスの直接的な尊敬の念に当てられて、照れで顔を赤く染めつつチラリとこちらに視線で助けを求めてくる。ああいうストレートな称賛に弱い、そんな彼女の気持ちは分からないでもないので、とりあえず助け船を出してやろうと。
「レインには夢とか今更だよな」
「はい。レインさんのそういうところ、凄い尊敬してて」
「ぅぅ……」
どうやら助け船は泥船だったようだ。というか、そういうことを臆面もなく言いきれるルクスが悪いというか。そしてもう一人だけ助け船を出せる存在である
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